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健康に役立つ正しいウォーキングの方法

京都東山三条の鍼灸・接骨院「白澤堂HAKUTAKUDOU」です。

数年前にNHKスペシャル「病の起源第三集腰痛〜それは二足歩行の宿命か?〜」という番組がありました。

番組では現在も狩猟生活を営むアフリカのハザ族の人々には腰痛がないことをとりあげていました。最古の腰痛の痕跡は古代シリアの農耕遺跡から出土した遺骨に見られることから、長距離の移動をやめ定住し、同じ姿勢と動作の多い農耕を始めたことがそもそもの腰痛の原因であり、二足歩行が直接の原因ではないと言及しています。

二足歩行が腰痛の原因ではなく、歩行不足によって腰痛になりやすいのではないかという示唆を、テレビでようやく提示しはじめるようになりました。

早朝や夜に公園を通るとウォーキング中の人々が見当たります。2018年調査の週一回以上の散歩・ウォーキング実施率は32.9%推計人口3412万人(笹川スポーツ財団「スポーツライフに関する調査報告書」1996〜2018年)であり、22年間でおよそ2.4倍。散歩やウォーキングが少しずつ普及し定着してきていることが伺えます。

このように、健康や運動を目的とした歩行習慣の意識が浸透してきている中で、まずはそもそもなぜ歩行が身体に良いのかということをお伝えしたいと思います。歩行の目的や意味が分かることで、正しい歩行=健康に役立つ歩き方のコツを身につけることができるからです。

歩行の目的と重要性

歩行(ウォーキング)の意味

歩行とは何か。

結論からいえば、歩行とは「移動様式」です。

動植物が移動するためにとる形態や方法のことをいいます。虫は這う、鳥は飛ぶ、魚は泳ぐ、猿は木の上を伝う、植物は基本移動できないので種子を飛ばしたり運んでもらう。このように生物はいろいろの移動の手段でもってA地点からB地点へと移ります。移動ができなければ、水や食べ物のある場所に行きエサにありつくことはできません。また、生殖し子孫を残すことも叶わないばかりか、危険が迫った際回避することもできません。

このように移動というのは生きていく上で非常に重要な意味をもつ要素です。そして、移動・捕食・生殖の3つを合わせて「生物の三大生理要素」と呼んでいます。現在は文明や社会が発展し、歩けずとも機械の助けを借りて移動できるようになり、デリバリーなどで自宅に必要なものを届けてもらえる時代です。

都市部であれば移動しなくとも暮らせるようになりました。しかし、もし野生の世界に戻ってしまったなら移動できないことは死に直結します。それだけ生物にとって移動という要素が重要であることを再認識しなければなりませんし、自力でしっかり歩けるならばその有り難みを忘れてはいけないと感じています。

ヒトが二本脚で歩くことを、冒頭で二足歩行と述べましたが、正しくは「直立二足歩行」と称します。より正確には、「直立二足自発的歩行」といいます。普段あまり意識することはありませんが、直立するという事自体、ただならぬことを行っています。

もともとは四足動物であり、現在ヒトが手や腕として使っている上肢はもとは前足です。ヒトも赤ちゃんの時にはハイハイの四つ足歩行から始まり進化の過程をたどるようにして徐々に立ち始めます。猿も動きの中でたまたま二本脚で歩くことがありますが(両手に食べ物を抱えたときなど)、直立できません。人間のように頭の先から足の裏までまっすぐに伸びて自発的に歩くことができないのです。「直立」というのはヒトに備わったヒトだけの特徴です。

ヒトの直立

ヒトが直立できるのに、チンパンジーやサルは直立できない違いは何なのでしょうか。

その理由の一つには骨盤と大腿骨の形状が関係しています。

図1

上図1をみると、チンパンジーの骨盤(腸骨)のかたちはヒトに比べて縦に長く仙腸関節(仙骨と腸骨の関節)と股関節との距離が長くなり、直立して体重を支えるには不利であることが分かります。

また、大腿骨の首にあたる部分を大腿骨頸部と呼び、大腿骨頸部の角度と長さの違いをヒトとゴリラの場合に分けて図示しています。ゴリラは大腿骨頸部が比較的長くほぼ真横に張り出した角度となっているのに対し、ヒトでは短くなっておりゴリラと比較してやや縦方向に角度をもっています。この部の角度や長さも直立のしやすさに関わってきます。

図2

図2はヒトとチンパンジーの骨盤を前からみたところです。チンパンジーもゴリラ同様の骨盤および大腿骨形状をしています。

上体からの体重を受ける仙腸関節(赤色の線の部分)の角度と、大腿骨頸部の角度がヒトとチンパンジーで異なります。ヒトにおいてはうまい具合に正三角形のような形で仙腸関節面がありますので上からの体重負荷に強く、股関節の方向に向けてうまく力を伝達することができます。逆に地面からの抗力は下肢→股関節→仙腸関節へと伝達され、赤いラインで示した正三角形(仙骨)のところに圧力が集中して安定する形となっています。そして圧力の一部は恥骨の方へも分散され、結局は骨盤の環状構造全体で支えることにもなります。

一方、チンパンジーの方は赤いラインの仙腸関節が前からみるとほぼ垂直になっていますので、上から体重がのるとそのまま下へと圧力がかかり、股関節方向へ力を伝達できません。さらに図1に示した腸骨が縦長である事と大腿骨頸部が長いという問題から、仙腸関節と股関節・大腿骨の距離が離れて互いの力は交わりにくく、ヒトのようにうまく力を伝達して支えられません。

もしチンパンジーが直立すれば、黒いラインで図示しているように仙腸関節部分にかかる体重と、大腿骨から股関節にかかってくる抗力のベクトルが分離してしまい、圧力を集中することができません。

ヒトの場合は負荷に強い形である正三角形(トラス構造)をした仙骨で体重負荷と地面からの抗力をギュッと凝集して受け、支点となることで安定して腰を立たせることができるのです。

図2の下部、袋のような荷物を二人の人間が協力してもった図をみてください。図は『話したくなる!つかえる物理』(左巻健男編著)より引用しています。この二つの図は、図2の上部にある骨盤の力のつり合いの図と似ていませんか?(荷物を持った図を上下反転すれば骨盤の図と重なります)

ヒトの骨盤の力のつり合いは二人で袋の取手を120°の角度に開いてもった場合と相似し、チンパンジーの骨盤は二人で袋の取手を垂直に垂らし同じベクトル方向へと持ちあげている場合と相似します。

当然、二人で同方向に持ち上げる方が荷物は軽く持ちあげられます。二人で取手を開いてもつと結局一人で持つときと同じ力が必要になります。

ということは直立した場合にチンパンジーの方が股関節への負荷が少ないことが分かります。二人で同じ方向に荷物を持つ場合と力のつり合いが似ているわけですから片方の股関節への負荷は1/2になります。では直立した時にチンパンジーの方が股関節への負荷が少なく有利なのではないかと考えられます。裏を返せば直立時にヒトの股関節負荷は同体重のチンパンジーの2倍に達しているということです。

この問題に関してまず述べておかなければならないことは、関節の特性についてです。

それは、関節は関節の軸に対して圧力がかかった場合に最も効率よく機能するという点です。

逆のように感じるかもしれませんが、関節に正しく圧力がかかると摩擦が増大するのではなく逆に摩擦が激減するうえに力もうまく伝達されます。

これは関節が袋に包まれ密閉されていることと、その間がわずかの関節液で満たされていることによります。

関節に荷重がかかると、関節内部の圧力が高まると同時に関節液が一様に広がり、ちょうどリニアモーターカーが空中に浮いて滑らかに走るように、関節を構成している骨同士が接触することなく滑走します。

関節内部の圧力が関節液によって均等に伝達される(パスカルの原理)ため油圧と同じメカニズムで骨から骨へと力が無駄なく伝わり、エネルギーロスが激減します。そのため周りの筋肉の無駄な支えも必要なくなり、疲労しにくくなります。

これとは逆に、関節を引っ張ったり圧をかけない状態にすると、関節内部は陰圧となり、関節腔内の圧力分布が不均等になるため応力を分散することができず、この状態で関節を動かすとただちに骨同士が接触し摩耗します。

このようにリニアモーターカーのように関節面同士が直接接触せず、介在する関節液によって摩擦が減って滑走性が高まる現象を「潤滑」と呼びます。「潤滑」のためには圧力が必要ということが重要な点です。

ヒトにおいては大腿骨頸部の傾きや仙腸関節の位置形状が絶妙に配列されているため、股関節の軸に対して正しい圧力がかかるからこそ、股関節がスムーズに動き、力を効率的に伝達できるようになっているのです。

一方、チンパンジーの方は大腿骨頸部が長い上に側方へと張り出しているため股関節軸に沿って圧力がかからず、大腿骨の首の部分に剪断力という引きちぎるような力がかかってしまいます。ヒトのように股関節からきた圧力と上体からきた圧力が仙骨のところで圧縮され支点を形成するのとは違い、チンパンジーは上体からきた圧力と大腿骨からくる圧力が交わらないため二軸性となり、相互干渉力をもたないが故、安定させるには無駄な筋力を必要とします。

冒頭で「腰痛~それは二足歩行の宿命か?」と題するNHKの番組を取り上げましたが、むしろヒトの骨盤は二足歩行に適した形になっており、二足歩行つまりウォーキングを行うことによって生理性を維持・向上させる動物であるといえます。二足歩行だから痛いのではなく、二足歩行が足りていないから痛みます。NHKの番組内でも狩猟生活で長距離を移動するハザの人々はケガの場合を除き日常生活の中では腰痛がないことを紹介していました。

歩行(ウォーキング)の重要性

前節で直立二足歩行を行うための要件がヒトの骨盤および大腿骨の形状に備わっていると述べました。

歩行不足で、かつ椅子で座る仕事が多い場合には、仙腸関節の部分に「ゆるみ」が生じます。詳しく述べると下図aのように腸骨が仙骨に対して前方へと回転することにより「ゆるみ」の状態ができあがります。下図bのようにデスクワークや自転車、車両の運転などの座位姿勢では骨盤が下から“くさび”を打たれた状態となり、ゆるみます。

a. 仙腸関節のネジ構造 ~ゆるみと締まり~
b. 立位と座位の骨盤への影響

仙腸関節が「ゆるむ」と下肢後面の筋肉の張りが増し、膝が曲がります。その影響で股関節が外に開き、腰椎がまっすぐ支えられず後弯(背が丸くなる)し、直立できなくなります。これは直立するのに最適であった図2に示したような正三角形の支持構造(トラス構造)が崩れるためです。

直立できなくなるということは、言葉が悪いかも知れませんが、いってみればチンパンジーの姿勢に似てくるということです。これが様々な病の出発点となります。

仙腸関節が「ゆるむ」ことで、まず起こるのは腰痛です。仙腸関節に限らず、あらゆる関節は「ゆるむ」と危険信号としての痛みを発信します。その後、その「ゆるみ」をかばうために例えば反対側の仙腸関節、股関節や膝関節、背骨の関節や肩関節など他の関節によってカバーします。当然カバーした他の関節の負担は大きくなり、さらに他の関節でかばって波及していき、次々と壊れていきます。

仙腸関節は上半身の体重を支えると同時に地面からの抗力を受け、重心を常にモニターする巨大な重力感作器であるともいえます。仙腸関節がゆるんではずれた状態になるということは、重心制御して安定をはかるセンターがグラグラになってしまったということで、地盤のもろいところに高層ビルを建てるようなものです。このような状態ではまわりの筋肉が頑張って支えないといけませんから、痛みがでますし大変疲れやすくなります。

さらに土台が傾くことによって腹腔や胸腔内に圧力の差が生まれることで、内臓も正常に機能しなくなるおそれもあります。

重心制御の要である仙腸関節の「ゆるみ」をつくらないよう維持する行為が「歩行(ウォーキング)」です。地球上の重力を利用してヒトは移動するたびに仙腸関節にグッグッと圧力がかかり、二足歩行に必要な構造を保つことができるようになっています。

しかし現代は車や自転車での移動が主、仕事で同じ姿勢の繰り返しで、忙しさのため十分なウォーキングの時間を確保できない状況です。文化的には豊かになった反面、身体は退化するばかりです。

休日や仕事が終わってからスポーツや運動をしているからいいという方もいらっしゃるかもしれませんが、先で述べましたように「歩行」は移動様式であり、運動ではありません。運動と歩行は別に分けて考えなければなりません

好きな運動をするのは色々な意味でもちろん良いことですが、歩行不足であれば健康を維持するための身体はできあがりません。

歩行(ウォーキング)が仙腸関節の状態を堅固にし、しっかりとした身体の土台・中枢をつくりあげ生理性を保全する行為であることを是非知って頂きたいと思います。

ウォーキングの効果

正しいウォーキングを行うことで期待できる効果は以下のようなものです。しかし、効果を意識しすぎると一時のブームに終わってしまうおそれがあります。

「歩行」がヒトの生理=いのちを育む充電のような行為であるため、生涯にわたり日常の中に取り入れていただきたいと思います。

●造骨:骨は圧力をかけることで丈夫になります。歩くことにより骨に圧力がかかると電子が飛び出し、骨表面はマイナスの電荷を帯びます。そこへカルシウムイオンなどのプラスの電荷をもつイオンが集まり骨がつくられます。骨折を減らし、寝たきりを防ぎます。

●造血:骨の中には骨髄があり、赤血球や白血球がつくられる場所です。歩行時には着地して骨に圧力がかかる時に骨髄容積が狭まり、足が地面から離れて骨に圧力がかからない時に骨髄容積が広がり、これを繰り返しています。骨髄では、圧力がかかった時には、白血球のうちの顆粒球・単球(マクロファージ)がつくられ、圧力が低下した時には赤血球がつくられ、白血球のうちのリンパ球がつくられます。ウォーキングによってこれら血球の産生がうながされ、免疫力が高まり病気に強くなります。

●循環:にぎりこぶし大の心臓のポンプひとつで全身の血液循環を任せるのは酷です。心臓は構造上駆出ポンプであり吸い上げポンプではないため、血液を送り出すことは得意でも血液を心臓までかえすことが苦手です。そのため第二の心臓とも言われる足のふくらはぎのポンプを活用し、血液循環を助けてあげる必要があります。ウォーキングによって血液循環を促進し、骨髄でつくられた免疫細胞を全身に届けます。

●消化吸収:全身の血液循環が良くなると、胃腸の働きもよくなり消化吸収能力の向上を期待できます。歩く振動や動きにより胃や肝・胆、膵臓をほどよくマッサージし、消化液やホルモンの分泌を促進します。

●濾過:腎臓では血液を濾過することにより老廃物を尿中へと捨てます。腎臓の糸球体というところでは網目のような構造となっており、圧力がかかることで血液が濾過されます。ウォーキングのリズミカルな振動が濾過に必要な圧力を助け、尿の生成に役立ちます。

●精神安定:リズム運動により感情や気分のコントロール、精神安定などに関わるセロトニンが分泌されやすくなります。歩行はリズム運動ですので、自律神経を整え精神安定の効果が期待できます。リズム運動には、歩行の他に咀嚼や呼吸が考えられます。最近子供がキレやすいなどの問題がありますが、子供のうちから「よく歩く」「よくかむ」「鼻で呼吸する」習慣を身につけるようにするとよいでしょう。

●認知症:上記精神安定の効果とともに、ウォーキングは認知症にもよいと考えられます。足がリズミカルに地面に接することでアースと同じ原理で脳に貯まった電気エネルギーを地面へと放電するという報告があります。認知症の方の中に「徘徊」される方がおられますが、歩く事によって無意識に貯まったエネルギーを抜いておられるのかもしれません。

●運動器系:関節の「ゆるみ」つまり関節のズレともいえる位置異常が解消されれば痛みはなくなります。関節がゆるく不安定であると周りの筋肉も固めて防御しなければならないためカチカチになり疲れやすくなります。また、歩行により抗重力筋が鍛えられると同時にバランスがよくなり、姿勢や無駄な力みが改善されます。

●冷え症:筋力がつくことと、血液循環がよくなること、内臓の状態がよくなることにより、手足末端の冷え症の改善が期待できます。血液は状態のよくない内臓を修復するため体幹の中心部に集まるため、末端の手足への血流が減ることで冷え症となります。歩行で内臓の調子がよくなれば冷え症にも効果を期待できます。

正しいウォーキングの方法

ウォーキングのフォーム

前節のウォーキングによる生理的な効果を期待するには、正しい方法でウォーキングをすることが大切です。

ただなんとなく歩くよりも、効果的なフォームを意識しながら毎回同じ動作を繰り返すことで量が質へと転化します。

例えば、雨垂れにより手水石に孔が穿たれることを考えてみてください。まったく同じ箇所に水滴がずーっと垂れ続ければ数年の単位で石を穿つ効果が現れます。しかし水滴の落ちる場所が毎回微妙でも違えば岩を穿つことは叶いません。数年間何度も同じ場所に水滴が落ちることによって始めて孔が穿たれるという効果が生まれます。そのためには、正しい動作でかつ同じ動作を繰り返すことが重要で、それがフォーム(型)です。

特に歩行の動作の中には、走る、投げる、蹴る、突くなど他の多くの運動の原型となる成分が含まれています。その証拠に、ヒトはまず“直立する”ことができた後に“歩く”という動作ができるようになって、その後すべての全身運動が習得されていきます。この“直立二足歩行”こそが多くの運動の基礎となります。

それでいて“歩く”というのは、動作のまとまりとしては非常にコンパクトです。複雑で長い動作は同じ動きをし続けることが難しいですが、歩行の動作は繰り返しやすいことが利点です。日常的に意識するだけでも一日数千回は繰り返すことになるでしょう。

それでは実際のウォーキング方法をご紹介していきます。

上の図は日本構造医学研究所所長吉田勧持氏が提唱されておられる生理歩行の概要を示した図です。

最も重要な5つのポイントを先に列挙します

  1. まっすぐ前をみる
  2. 一本の線を挟むように歩く
  3. 上体はやや前傾させる
  4. 両手の親指は握らずに立て、他指は軽く握る
  5. 肘を曲げ、斜め後方へ少し引く意識をする

図をみながら上記の5項目を意識して練習して頂ければ正しい形で歩くことができるようになってきます。ひとつずつ解説します。

1.まっすぐ前をみるのは視野が広がり安全面においても大切なことですが、まっすぐ前をみることで頸肩部の緊張を和らげると同時に、脚が前方へでやすくなり、転倒しにくくなります。

2.身体のセンターライン(図の鉛直線)がすーっとまっすぐ前に進むときれいに歩けます。一本の線を挟む意識をもって歩くと、身体の重心が安定しやすく、足先が内や外へ向かずにまっすぐ前へ出すことができ、左右の動揺も防げます。

3.まずは上体を前傾させずにまっすぐにして歩いてみてください。体重は後ろの足にのりやすく、前へと足が出にくくなります。逆に上体を前傾させていくと自然に前足が前方へとでやすくなり、前足に体重がのっていきます。この時の前足にかかってくる荷重が骨盤の関節を正常化させる方向へと働き、前節でご説明した「ゆるみ」を解消するのに重要な要素です。

歩き始めの初動の原動力として、直立位から前方へと上体をだんだん倒していくと、転倒しないようにどちらかの脚が自動的に前に出ます(実際に転倒しないよう充分ご注意ください)。その勢いを利用して前進していきますが、歩いている最中も上体は若干の前傾位となります。これにより脚は振り子のように前へとでやすくなり、歩幅も広がりやすくなります。

また、踵から地面に接地していくことも大切です。上体が前傾して脚が自然に前にでていれば踵から接地できるはずなので5項目の中には入れていません。この際、「ドン!」ときつく地面に衝くと膝やその他の関節を損傷する可能性があるので、あくまでやさしい接地を心がけてください。

4.親指をぎゅっと握りこむと、腕を振った時に心臓へと血流が還りにくくなり心臓に負担をかけてしまい危険です。親指を立てることで、腕が前に振られた時に慣性力により血液が親指の先を起点に折り返し、心臓へと還流できます。歩き慣れてくるとその感覚が分かるのでおもしろいと思います。他の四指は真綿をつかむような気持ちで軽く握ります。

5.肘を曲げることで腕のリーチを減らすと、肩関節への負担を避け、身体の側方への動揺を防げます。腕を振るというよりは、肘を軽く後ろに引くような意識で行います。肘が後ろにでる反動で同側の脚が前方へでやすくなります。この時、まっすぐ後方へと肘を引くのではなく、やや斜め後ろに引く方が肩関節への負担が減りますが、あまり横へ張り出すと今度は身体が左右に動揺しますのでご注意ください。脇を閉めず肩の力を抜いて歩きます。

以上が正しいウォーキングのコツです。

補足として、歩幅は若干広くして歩くのが良いです。イメージとしては、前足の踵をちょっと遠く、ちょっと遠くというような気持ちで接地すればよいのです。しかし、ウォーキングに慣れないうちは初めから歩幅を広くしないでください。逆に傷めてしまいウォーキング自体断念することになりかねません。

また、後ろ足で地面を蹴った方がいいのかというご質問を頂くことがありますが、蹴る意識や蹴る必要はまったくありません。上体を前傾することで勝手に脚が前にでるので前進します。蹴る意識が強いと膝が屈曲し、身体が下に落ちるのをまた前足で持ち上げなければならないためロスが大きくなります。むしろお尻の付け根と太ももの間くらいに意識をおいておくと上手に歩けます。

歩行の時間と速さ

先にご紹介した生理歩行の実施時間は43分間です。

30分を超えなければ前述してきた効果がほとんどみられず、40分までの10分間で生理性を保つ効果が期待できます。残りの3分はロスタイムです。

40分を超えると疲労を感じる方が多く、逆効果となることがあります。最大でも60分を超えないようにしてください。

時間を分割して歩くとあまり効果は期待できません。あくまで一回の歩行時間が40分間の持続歩行ということです。

しかし、最初の1~2週間は20分間くらいから始めて、徐々に40分に近づけてみてください。寒い季節に急に歩き出すと負担が増えるので、体力に自信のない方が寒い時期から開始する場合には無理のないようお気をつけください。

次に歩行の速度です。

ウォーキング時の速さを変えることで目的とする生理機能を高めることができます。以下を参考に歩いてみて下さい(日本構造医学研究所所長吉田勧持氏考案)。

①第一生理歩行:平常時の歩行速度よりもすこし遅め、ゆったり緩やかに歩く場合には消化器系の機能増進と精神安定の効果が期待できます。

②泌尿器系歩行:平常時の歩行速度で歩く場合には泌尿器系の回復・増進に効果を期待できます。

③呼吸循環器系歩行:平常時の歩行速度よりやや速歩。呼吸循環器系の機能回復・増進に効果を期待できます。

④第二生理歩行:速歩。運動支持系の機能増進。筋力・骨の強度が高まり、関節の潤滑機能の促進、気力・活力の充実。

習熟度に合わせて①から④へと徐々に速度をあげていくとよいと思います。

より具体的な速さは以下を参考にしてみてください。

身長別各生理歩行速度の目安
(『「歩行」と「脳」』吉田勧持/著 エンタプライズ出版 より引用)

ウォーキングの服装と場所

ウォーキングは動きやすい軽装とジョギングシューズで行います。当然荷物などは持たないようにしましょう。

冬場で路面が凍結し滑りやすい状態であるならば、転倒時に手をついて骨折することを防ぐためスキー用のグローブなどの厚手の手袋を着用しましょう。寒い時期にはカイロなどを用いず、衣服下気候、つまり重ね着により適温を保つようにします。最近は薄手で暖かい便利なインナーがありますから利用すれば良いと思います。冷たい空気を吸うと鼻が痛くなる方はマスクを着用します。

場所に関しては、本当は平坦な土の上を歩くのが一番いいのですが、舗装された道を歩く事が多いと思います。硬いだけでなく、道路には降雨対策による傾斜があるため、クッション性のあるジョギングシューズを履くことでこれらの悪影響を緩衝することができます。

道路の傾斜を考えると、毎回同じ場所を歩いていては同じ傾斜の影響が蓄積します。帰り道は反対側の道路を歩くなどして左右の偏りをなくすようにすることも大切です。

また、左回りばかりのコース、右回りばかりのコースなどを設定しないようにしましょう。大きな公園を周回するコースは歩きやすいですが、公園によっては回る方向が利用者の暗黙のうちに決まっているところもあり(普通は反時計まわり)、皆がその方向へ回るものですから、毎日同じ方向に周回している方が多いです。(若干他の方の迷惑になるかもしれませんが)うまく反対まわりも取り入れて偏りをなくしましょう。これは後々ご紹介する重要な内容と関係があります。

ウォーキング時の呼吸について

ウォーキング時の呼吸は、吐くことを基本とします。

吐くときは口をとがらせて「フー」と吐き、吸うときは鼻から「スー」と吸います。呼気二回、吸気一回の「フーフー、スー」というリズムで行います。

第一生理歩行・泌尿器系歩行は鼻だけで呼吸できます。

呼吸循環器系歩行・第二生理歩行では口をとがらせて吐く閉塞式呼吸で行います。

補記

骨盤の「ゆるみ」の話をしました。

骨盤が「ゆるむ」とは、腸骨が仙骨に対して前方へと回転し、関節がわずかにはずれたような状態です。正常であれば、上体からの体重と下肢からの抗力を仙腸関節や恥骨の部分で軸受けすることにより力の伝達と分散がうまくいきます。

実は、骨盤の「ゆるみ」が右に生じた場合、左に生じた場合によって、疾病との結びつきがあります。具体的には・・・

  1. 左の骨盤の「ゆるみ」:横隔膜より下の臓器に影響し、腎・泌尿器系疾患、肝・胆道系疾患・膵疾患・糖尿病・婦人科系疾患と関わる。また、低血圧となりやすい。
  2. 右の骨盤の「ゆるみ」:横隔膜より上の臓器に影響し、心疾患、呼吸器系疾患と関わる。また、高血圧となりやすい。
  3. 左右両骨盤の「ゆるみ」:喘息

そのため、先述したウォーキングを行う場所の話に関わるのですが、例えば右の骨盤がゆるい方(心疾患や呼吸器系疾患のある方)が左回り(反時計まわり)ばかりで歩いたり、左に傾斜した舗装道路ばかりを歩くと、右脚に体重がのりにくく、右の骨盤の「ゆるみ」が場合によってはつよくなり、心疾患・呼吸器系疾患が悪化することがあります。

実際にトラック競技で走っている途中や走り終わった後に心臓麻痺で倒れられる方がいらっしゃいますが、あれはもともと右の骨盤の「ゆるみ」があるうえに、反時計まわりで走ったがため右骨盤のゆるみがきわだって起こったものです。

このような事実があるので、ウォーキングのコース選択の参考にしてみてください。

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Nagahama

はじめまして、鍼灸・接骨院「白澤堂HAKUTAKUDOU」の院長・長濱です。 当院では、東洋医学の幅広い知識を現代に活かし、皆様の健康を支える施術を行っております。気血のバランス、骨格のバランスを整えて本来の正常な機能と動作を取り戻すことが大切です。心身のお悩み、お気軽にご相談ください。

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