朝、布団から出て最初の一歩。
「ズキッ」と踵や足裏に鋭い痛みが走り、思わず体重をかけられない——
そんな経験はありませんか?
この症状で多くの方が疑うのが「足底腱膜炎(足底筋膜炎)」です。
実際、朝の一歩目が痛いという訴えは、足底腱膜炎の典型的な特徴のひとつです。
ただし、ここで注意したいのは
「足の裏だけを見ていても、本当の原因には辿りつけない」
という点です。
この記事では、一般的な説明に加え、
骨盤の動きから考える足底腱膜炎の本当の原因と、
今日からできる現実的な対策をわかりやすく解説していきます。
目次
足底腱膜炎(足底筋膜炎)とは?
足底腱膜炎とは、踵の骨(踵骨)から足の指の付け根にかけて広がる
「足底腱膜」と呼ばれる膜状の組織に、過剰な負担がかかることで起こる痛みです。
歩行や立位時に足のアーチを支え、衝撃を吸収する重要な役割を担っていますが、
繰り返し引き伸ばされることで微細な損傷が起こり、炎症や痛みが出現します。
特に多い症状は
- 朝の一歩目が最も痛い
- 動いているうちに少し楽になる
- 長時間座った後の立ち上がりで痛む
といった特徴です。
一般的に言われている原因と、その限界
足底腱膜炎の原因として、よく挙げられるのは
- 長時間の立ち仕事
- ランニングやジャンプの繰り返し
- 足のアーチ低下(偏平足)
- 靴が合っていない
といったものです。
これらは確かに「きっかけ」にはなりますが、
なぜその人だけが痛くなるのか
なぜ片側だけに起こるのか
という疑問には、十分に答えられていないケースが多いのも事実です。
そこで重要になるのが、足よりも上にある構造、
つまり「骨盤」と「脚全体の連動」です。

足底腱膜炎の本当の原因は「骨盤の前上方回転」
足底腱膜炎を構造的に見ると、
痛みの出発点は足裏ではなく、骨盤(寛骨)の位置異常=ゆがみにあります。
足底腱膜炎を引き起こす場合の骨盤のゆがみは、寛骨と呼ばれる骨盤の骨が、前上方へと回転した状態がほとんどです。
下の図を用いて説明しましょう。

①骨盤が前上方へ回転すると、何が起こるのでしょうか。
②まず、太ももの裏からふくらはぎにかけての
脚後面の筋肉群が常に引き伸ばされた状態になります。
③この張力は、アキレス腱を介して踵の骨を上方向へ引き上げます。
踵骨が持ち上げられると、結果として
④足底腱膜は常に引っ張られた状態になります。
つまり
・歩いていなくても
・立っていなくても
・寝ている間でさえ
足底腱膜には「張力の貯金」が溜まっている状態なのです。
朝は特に荷重がかかっていないので、各関節も最もゆるんでしまっている状態です。
関節がゆるむということは、脚の後ろから足裏の筋肉もその分引っ張られてピーンと張っている状態。
朝起きて一歩踏み出した瞬間、
その張力が最もかかっている踵から土踏まずあたりのところで、強い痛みとして感じられる。
これが、朝の一歩目が痛くなる本当の理由です。
補足:なぜ骨盤が前上方へと回転するの?
骨盤は前に回転すればゆるみ、後ろに回転すれば締まる構造をしているので、
骨盤が前上方へと回転している場合は、骨盤がゆるむ方向へズレている状態です。
骨盤がゆるむ場合は、ギックリ腰を繰り返していたり、重い物を持ち上げたり、中腰姿勢が多い、座り姿勢が多い、歩くのが少ないなどの原因が考えられます。
なぜ足裏をほぐしても良くならないのか
足底腱膜炎のセルフケアとして、
足裏をマッサージしたり、ゴルフボールで転がしたりする方法があります。
一時的に楽になる方もいますが、
すぐに再発してしまうケースが多いのはなぜでしょうか。
それは、
引っ張り続けている元(骨盤と脚後面)に何もアプローチしていないからです。
ゴムを両端から引っ張ったまま、
真ん中だけを揉んでいる状態を想像してみてください。
根本的に負担が減らないのは、イメージしやすいと思います。
とはいえ、マッサージやストレッチは一定の効果もあります。
その場合には足裏ではなく、ふくらはぎや太ももの後面に対して行う方がお勧めです。
今日からできる現実的な対策
対策のポイントは「足」ではなく「全体の張力を下げる」ことです。
まず意識したいのは
・長時間同じ姿勢を避ける
・反り腰になりやすい立ち方を見直す
特に、腰を反らせて立つクセがある方は要注意です。
骨盤の前上方回転を助長し、足底腱膜への負担を増やします。
次に有効なのが、
太もも裏〜ふくらはぎ全体の緊張を下げるケアです。
部分的に伸ばすのではなく、「連動」を意識することが大切です。
無理に強く伸ばす必要はありません。
ゆっくり呼吸をしながら、張りが抜けていく感覚を大切にしましょう。
おススメのストレッチ

壁をつかったふくらはぎのストレッチを行ないます。
膝をピーンと伸ばして行う場合と、膝を少し曲げてストレッチする場合では伸びる筋肉が異なります。両方を反動をつけずにじんわりのばすことを毎日行いましょう。

タオルをつかったストレッチはおススメです。
床に寝て、タオルを足裏にひっかけて上方へ伸ばします。
前上方へと回転した骨盤を、後ろへと戻す作用も期待できます。
実は、青竹踏みやインソールは逆効果になることも

意外かもしれませんが、青竹踏みやインソールの使用は逆効果になる場合もあります。
青竹踏みは足裏の筋肉をほぐして柔らかくするために。
インソールは偏平足を保護して足裏のアーチを支えるために行うでしょう。
しかし、足裏にあるアーチ構造は、下からの持続的な力によってその構造が破綻することがあります。
橋(アーチ)は、上からの力には強いのですが、下から持ち上げられる力には弱いのです。
特に、トップストーン(キーストーン:要石)と呼ばれる一番上にあるブロックを下から押し上げるだけで、橋全体が壊れます。
足で、このキーストーン(要石)にあたるのは、図にある「舟状骨」という骨です。この骨を下から押し上げる力がずっと加わると、アーチを補強するどころか、壊れてしまうおそれがあります。
こうしたことを知っておきながら、必要に応じて対処することが重要です。
踵骨棘(しょうこつきょく)との関係
足底腱膜炎とセットで語られることが多いのが「踵骨棘」です。
踵骨棘とは、踵の骨にトゲのような骨の突起ができた状態を指します。
レントゲンで見つかると
「このトゲが痛みの原因です」と説明されることもありますが、
実は踵骨棘そのものが必ずしも痛みを出すわけではありません。
長期間にわたって足底腱膜が引っ張られ続けた結果、
骨がその張力に耐えようとする防御反応として形成されたものが踵骨棘です。
つまり、
踵骨棘は「原因」ではなく
長年の負担の結果として現れたサインと考える方が自然です。
この場合も、骨盤の位置や脚後面の張力を無視したままでは、
痛みが長引く傾向にあります。
まとめ:足裏だけを見ないことが改善への近道
朝の一歩目の痛みは、
単なる足の使いすぎではありません。
骨盤の位置、脚全体の張力、
そして日常の立ち方・歩き方まで含めて考えることで、
ようやく「なぜ治らなかったのか」が見えてきます。
足底腱膜炎を繰り返している方ほど、
一度「足以外」に目を向けてみてください。
それが、長く悩んだ痛みから抜け出す
大きなきっかけになるかもしれません。
なかなか痛みがとれない場合はご相談を
足裏の痛みである足底腱膜炎(足底筋膜炎)は、常にストレスを受ける場所であるためしつこい痛みが数か月~それ以上にわたり慢性化する場合が多い疾患です。
長期化してしまった場合、足裏以外にも原因があるため、骨盤から股関節、足首までの問題をみていかなければ緩解していきません。
セルフストレッチをしてみたけれど、なかなか痛みが取れない場合は、全身のバランス異常をみてくれる鍼灸院や整骨院を選択肢にいれてみましょう。
京都市東山区三条にある鍼灸・接骨院 白澤堂HAKUTAKUDOUでは、全身から局所の問題をみていき、数々の実績があります。ご自身では解決しきれない場合に、ぜひ気軽にご相談ください。
















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