目次
はじめに
本記事は、運気学説に基づき2025年の気候変化や動植物への影響、人の健康への影響を推し量ったものです。専門的な用語がちょっと…という方や時間がない方は読み飛ばして頂いて、
記事の最後の「干支からわかる2025年運気のまとめ」の部分でまとめていますので、そこだけ読んで頂くと良いと思います。また、要点を先に読んでから、間の部分を読むことで理解しやすくもなりますので、目的に合わせてお読みいただければ幸いです。
本記事から、人が自然の一部であり、自然とともに調和しながら存在するという東洋医学の「整体観」と呼ばれる世界観を味わっていただけると思います。
多様に変化する自然の移り変わりの中にも不変の法則性があり、古代の科学が解き明かした陰陽と五行の法則をもとに未来の予測をたて、どのように人の身体への影響である医学の分野に役立てているのか、その様子をお伝えでき少しでも東洋哲学に興味をお持ちいただければ幸いです。
実際に今年の運気から、自宅でお灸などで養生できるツボの名前と場所も記載しておきますので、ご自身の健康にもお役立てください。
最古の医学書に記された運気論(五運六気)
五運六気(ごうんろっき)、略して「運気」と呼びますが、中国最古の医学書《黄帝内経素問》中にある天元紀大論・五運行大論・六微旨大論・気交変大論・五常政大論・六元正紀大論・至真要大論の七篇で構成され、総じて運気論と呼ばれます。
宇宙の法則および自然の気候変化がもたらす万物と人に対する影響を論ずる天人相応の論理思考と観念です。
2025年の運気を、医学の古典である『黄帝内経』に記述された内容に則ってまとめています。
自然現象や人の発病に関しても、かなり大げさではないかと思われる内容も書かれていますが、陰陽五行や五臓六腑の基本的な内容をおさえて、どのような影響があるのかをみていくと、なるほどと思わされる部分もたくさんみつかります。
最後に現代に役立てられる形でまとめておりますので、どのような一年になりそうなのか、養生法も含めてぜひご一読くださると嬉しく思います。
運気論の基礎
運気は、天干地支より導きます。天干地支というと分かりづらいかもしれませんが、「干支」のことで「かんし」と読みます。干支はもともと幹と枝のことであり、十干と十二支があります。
十干(じっかん)とは「甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸」のことであり、空間概念であり、五運を導きます。毎年の年運が異なるのは、毎年の地球の所在が異なることを反映するためです。
十二支(じゅうにし)とは「子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥」のことであり、時間概念であり、六気を導きます。毎年の地球の所在が異なれば、四季のように気候の温度変化もまた相応して年により異なるため、地球に存在する動植物や人間の生活、生まれもった性質、さらには政治や経済などにも影響を及ぼすと考えるわけです。
※1 五運とは、土・金・水・木・火の五気の運行のこと。上記甲己が土、乙庚が金、丙辛が水、丁壬が木、戊癸が火というように、十干を五行に配して、毎年の歳運(その年の運、年運とも。)を推し量る。『黄帝内経素問』天元紀大論篇では、五運は地の陰陽とも云われており、天の気を消費して「中央・砂漠・凍土・湿原・密林」の地域特性により地上の万物を栄養する。運とは、輪転運動し、往来してやまざるの意。 太過と不及の別があり、太過とはある気候が時期的に早く訪れること、不及とは季節の到来が本来の時期よりも遅れることを一般的にいうが、通常の気候の移り変わりからずれを生じたり、気候特性が色濃くなったり現れなかったり、また五行的な相生・相克の概念とともに論じられることも多い。 六気とは、風・熱・火・湿・燥・寒の六種の気を指し、三陰三陽及び五行と結びついて、それぞれ厥陰風木・少陽相火・少陰君火・太陰湿土・陽明燥金・太陽寒水と表し、十二支を配する。すなわち、巳亥が厥陰風木、寅申が少陽相火、子午が少陰君火、卯酉が陽明燥金、辰戌が太陽寒水に配する。十二支は、地支ともいい、中国の殷代において12年で天を一周する木星の軌道上の位置(天の位置)を示すための数詞であった。
五運も六気にも主・客があり、主運・主気は毎年変化することのない季節の移り変わりです。それに対して客運・客気はその年その年ごとに反時計まわりで移り変わっていくものです。下図で示しているのは主に六気の主気と客気です。
図には明記してませんが、毎年1月20日頃の大寒から始まるのが「初之氣」です。3日を気、5日を候、3×5=15日を気候=1節気としますから、初之氣から60日87.5刻=四節気(一歩という)ごとに二之氣、三之氣…というように移っていきます。これに主気・客気を配していきます。
図の最外層は主気(緑色)。外から三段目に客気(ピンク色)を示しています。主気は毎年変わることのない気ですから、
主気:厥陰風木→少陰君火→少陽相火→太陰湿土→陽明燥金→太陽寒水
の順で、年に関わらず必ずこの図に示す位置にあります。
一方の客気は、図をみてわかるように
客気:厥陰風木→少陰君火→太陰湿土→少陽相火→陽明燥金→太陽寒水
という移り変わる順番は変わりませんが、年ごとに反時計まわりに移り変わっていきます。例えば、2025年は司天の位置に厥陰風木が位置していますが、2024年は2025年右間にある太陽寒水が司天の位置にありました。
ちょうど、主(あるじ)は動かずいつも同じ位置にあるのに対し、客(きゃく)は順番に入れ替わっていくようなものだといえるでしょう。
毎年客気が規則正しく移り変わればよいのですが、気候が常態に反することもあり、特殊な状況となることもあります。これら一般規律とは異なる常態変化には、『黄帝内経素問』の刺法論篇・本病論篇にある不遷正・不退位・升不前・降不下の区別があります。
図の最内層に示す「司天・在泉・間気」については、客気における六気の別称です。その年の上半期の気候を統率する客気を「司天」、下半期の気候を統率する客気を「在泉」とする理解もあります。
司天が陽の場合在泉は陰となり、逆に司天が陰の場合には在泉は陽となります。ここで、少陰と陽明・太陰と太陽・厥陰と少陽というように、図の対角にある気同士は相合して輪転します。厥陰が上がればその対角にある少陽は下り、これが陰昇陽降となるわけです。
司天・在泉の遷移がうまく運び、天地の気の昇降が順調であれば、自然の生成化育の作用も良好であると考えるのです。
五行の相生・相剋関係について
運気論を展開するにあたり、五行の知識が必要となります。五行とは木・火・土・金・水(もく・か・ど・ごん・すい)の5つのエレメントであり、エネルギーの昇降出入の状態であり、自然界の移り変わりのフェーズを5つに分けたものとも言えます。
そして、五行の各属性は独立したものではなく、関係性をもち、各々扶助関係と制約関係によって全体のバランスをとっています。
具体的には、
- 相生関係=相手を生かす関係
- 「木→火→土→金→水→木」という循環で相手を生じる関係。
- 相剋関係=相手を抑制する関係
- 「木→土→水→火→金→木」という循環で相手を抑える関係。
下図を参考にしてみてください。
五運にも六気にも五行が関わっており、このような関係性を利用してその年、時節の運気を分析することが可能となります。
2025年:乙巳(おつみ)年の一般的な気候
年運について
乙巳年は年運が天気を剋する「不和」の年
- 中運は「少商」=金運不及
中運とは大運のことで、各年の歳運を総括します。大運の年番には大過と不及の別があって、本年は不及にあたる年ですが、不及とは本来の時期になってもその季節が到来しないことを指します。一般的には陽年(大過)は本気が流行し、陰年(不及)は剋己の気が流行します。2025年(乙巳年)の「乙」は陰干であり、五行は金で、かつ陰年なので金運不及となり、剋己の気である火運の気が流行しやすいといえます(火は金を溶かしてしまうので、金気が抑えられてしまうのです)。
- 司天は「厥陰風木」、在泉は「少陽相火」
司天や在泉というのは、客気における六気の別名称です。古代、人は司天・在泉の位置を各々天地に分けて考えていました。天の司天が陰なら、地の在泉は必ず陽になります。図1.2のように反時計まわりで6つの客気が毎年移り変わり、天地の陰陽が入れ替わることで、天地の気の昇降が行われます。
2025年は中運である金が、司天の木を克するため、運気と天気が不調和を起こす「不和」の年となります。
不和とは、運が気に剋つ年で、「運が盛んで気が衰える」時期と考えられるため、今年の分析は五運を主として、六気を参考とするのが良いとされます。とはいえ、今年の運は不及(不足している)の年のため、運も気も両方参考にしてみましょう。
2025年の運気構造は以下の通りです:
- 上部:厥陰風木(司天)
- 中部:少商金運不及
- 下部:少陽相火(在泉)
金運不及の影響とその特徴
十干のうち、乙と庚は歳運をみる場合には共に金運に属します。そのうち、乙は陰年なので、先述したとおり2025年の乙年は「少商金運が不及する」年運となります。この金運の不足(不及)により、次のような現象が起こります:
- 克制が弱まる:金運不足により火(熱気)を克制する力が弱まり、火の熱気が「勝気」となる。
- 復気の発生:木を生じる水(寒気)が復活し、「復気」として働く。
- 木気が勢いを増す:金運が木を克制できないため、司天の木気が勢力を得て、「平気」として作用する。
勝気・復気の特性
2025年、運気は涼、勝気は熱、復気は寒となります。
- 運気:涼気
- 勝気:熱気
- 復気:寒気
金運不足による「勝気」と「復気」の影響が現れる場合、これは「邪化日」と呼ばれて、災害が発生しやすくなります。
災害発生地域と気象の特徴
「邪化日」による災害の発生地域は主に南方七宮に発生します。また、気象の不調和は以下の地域と状況に反映されます:
- 司天(風化八):東方(八風に対応)
- 勝気と復気が生じる場合、寒風が吹き荒れ、干燥して雨が降らない。
- 中運(清化四):西北方(八風に対応)
- 勝気と復気が生じる場合、高温で乾燥した天候が続き、寒雨が頻繁に降る。
- 在泉(火化二):西南方(八風に対応)
- 勝気と復気が生じる場合、暑湿が蒸し上がり、大雨が激しく降る。
このように乙巳年は、金運不足が原因となって火、木、水の勢いが不均衡を生じ、特定の地域での気象変化や災害を引き起こす可能性がでてくるのです。
「金運不及」とは?
金運不及は「従革(じゅうかく)」と呼ばれます。これは、金(五行の一つ)の硬さや剛性が不足していて、物質がしなっと柔らかくなって弾性を失う状態を意味しています。従革の年を「折収(せっしゅう)」とも呼んで、金がもつ性質である収斂(しゅうれん)の気が十分に作用せずに、逆に生長の気が活発化し、万物が繁栄するという現象が起こります。
火気が勢力を増し、金の性質が抑えられるため、司天である木(五行の一つ)の性質が正常な状態で働き、結果として木が「敷和(ふわ)」、つまり穏やかな気を散布して万物を栄えさせてくれるでしょう。
木の性質と作用
木はその徳を四方に広げ、陽気がのびやかになり、陰気があまねく拡散します。五行の気化作用も正常に働き、発散・温和・直進性の特性を持っています。木の作用は、万物を育て、曲がりくねりながら自由に成長させることです。ただ、木の邪気が肺を傷つけてしまうと病気が発生します。
金運不及するとどうなる?
自然環境への影響
これまで述べてきたように、金運が不足すると、火気と木気が強まり、乾燥と熱気が高まります。その結果、夏の陽気が長びいて万物が繁茂するでしょう。しかし、秋の収穫の気が遅れるため、白い穀物(例えば麦)が成熟せず、火の気が金を抑えることで、水の気が金を助けようと反応して、突然の寒気(霜、雪、雹)が発生します。このため、万物に害が及び、赤い穀物(例えば粟)の成熟も妨げられます。
人間への影響
金運不及によって、人においては以下の症状が出ることがあります:
- 肩や背中の重さ、鼻づまり、くしゃみ
- 大便に血が混じる、下痢
- 後頭部の痛みが頭頂部に広がる、発熱、心痛、口腔内の潰瘍
金運不及の年に、夏が自然な景色と気候(例えば、木々の繁茂)であれば、冬も正常な寒さを迎えます。しかし、夏に異常な灼熱や干ばつがある場合、秋には冷害(霜や雹)が発生し、冬には極端な寒さが早く訪れます。この極寒の気候により、動物が活動を停止し、陰湿な状態が続いてしまいます。
治療法(養生)について
中運の清化による病気の治療には、酸味のある薬や食品を使用して調和を図ることが良いとされます。
司天と在泉について
厥陰風木司天の年における運気と影響
2025年のように厥陰風木が司天(天の気)を支配する年では基本的に、風木の気が地に降りて盛んになります。この年の特徴とその影響について説明していきましょう。
気候と自然の変化
- 湿土の気が抑制され、水気が損なわれる
木気が湿土を克制し、湿土の作用が変化します。そのため、水気が十分に巡らず、乾燥が目立ちます。 - 虫類と植物への影響
- 毛虫(地中の虫類)は厥陰風木と同調するため、活動も繁殖も抑えられますが、消耗も少ないです。
- 羽虫(羽のある虫類)は少陽相火と同調し、生育が盛んになります。
- 介虫(殻を持つ虫類)は火による金気の抑制により生まれにくくなる。
- 穀類と味の影響
- 青色や赤色の穀類が育ちやすい。
- 苦味や酸味の食品が多く育つ一方で、辛味のものは火による抑制を受け、育ちにくくなる。
人体への影響
- 脾臓(消化器系)への影響
- 脾臓の気が妨げられ、消化器系を中心とした症状がでやすくなる。
- 症状:身体が重だるくなる、食欲減退、味が感じにくい、筋肉が痩せて衰える。
- 肺臓(呼吸器・皮膚)への影響
- 木気と火気により、肺金が抑えられ、乾燥とともに咳などの呼吸器症状および皮膚疾患が現れる。
- 症状:咳嗽、痰、喘息、声がかすれる、皮膚炎など。
- 風気の影響
- 風が人体に影響を及ぼし、以下の症状を引き起こします。
- 上部:目眩(めまい)、耳鳴り
- 中部:風気と燥気が勝負し合い、中部に影響(具体的な症状は熱感や乾燥感)
- 下部:熱病や炎症
- 風が人体に影響を及ぼし、以下の症状を引き起こします。
- 全身の傾向
- 風、燥、火、熱が交互に優勢になり、病状が変化しやすい。
- 昆虫が冬眠せず、流水が凍ることがありません。
これらは、天を主る司天の木気が人体の土気(脾胃)を剋することと、勢いを増した火気により金気(肺)を傷め、地を主る在泉の火気により更に下から熱気が起こることでこれらの症状を引き起こすと考えられます。
治療と調整方法
- 司天(風木・熱化)による病気
味が「辛」、涼性の薬や食べ物で治療します。ツボは太白、三陰交、経渠、尺沢、中脘、脾兪、肺兪。 - 在泉(相火・火化)による病気
咸味(塩辛味)を用いて、寒性の薬や食べ物で調整します。ツボは、陰谷、照海、腎兪。
これにより、天候や気の流れに適した治療と予防が可能になります。
2025年:乙巳年の気候異変(異常が起こった時の影響)
前年の太陽寒水が退かない場合の影響
- 春季の寒冷現象
- 太陽寒水が退かないと春になっても寒冷な気候が続きます。
- 現象:雹(ひょう)が降り、陰気が地を覆い、寒さが長引きます。
- 人への影響:
- 寒冷による手足の麻痺(寒痺)や四肢の冷え。
- 小便失禁や腰の痛み。
- 陽気の不足で温病(寒気が少ない温熱性の感染症)の流行が遅れます。
- 厥陰風木への影響
- 太陽寒水が居座るため、厥陰風木が正常に機能しません。
- 現象:本来なら木気がはびこり万物が豊かに生育するはずが、春本来の暖かい気候が訪れず、花や植物が枯れてしまいます。
- 人への影響:
- 怒りっぽくなる、筋肉の痙攣(こむら返り)、淋病、小便の赤みなどの症状が現れます。
陽明燥金の変動による影響
- 気候への影響
- 陽明燥金が地下に降りられず、気が停滞すると、清涼で寒冷な気候が続きます。
- 火気が強い場合には、日中は温暖で湿熱の気が目立つ一方、早朝や夜間には大きな冷気が現れます。
- 人への影響
- 症状:
- 体の重だるさや倦怠感。
- 夜の寝苦しさ、喉の渇き、口渇、多飲、心の煩わしさ。
- 気が停滞し続けると、眩暈(めまい)、脇腹の痛み、視力低下、手足のしびれや硬直が生じます。
- 陽明燥金が降りられないことで郁滞(気の停滞)が起こり、これが寒冷な気候を助長します。
- 症状:
少陰君火の変動による影響
- 君火が上昇しない場合の影響
- 水気(天棚水)が強すぎる場合や厥陰司天が正しい位置に収まらない場合、少陰君火は上昇できず、清涼で寒冷な気候が続きます。
- 人への影響:
- 陽気が内にこもり、心の動悸、寒熱交互の症状が現れます。
- 長期間君火が上昇できないと、郁滞(気の停滞)が進行し、突然の高熱や火熱の感染症(火疫)が発生します。
- 火疫(火熱の病)の発生
- 火気が極度に滞ると、一気に暴発し、火疫(感染症)が温暖な時期に流行します。
- 症状:心の煩わしさ、イライラ、口渇、特に激しい渇き。
- 対策:火熱を冷ます処置(薬や治療)を行えば症状は収まります。
まとめ
気候の変化と人体は密接に関係しています。気の流れに異常がある場合には、それに応じた治療や対策を取ることで、気の停滞や病気の発生を防ぐことができます。乙巳年の異常気象の場合に起きる特徴は、寒冷と火熱の気が交互に現れ、症状が多様化する点といえるでしょう。
2025年:乙巳年の治療と養生
図1.1に示す通り、巳年は厥陰風木が司天でした。厥陰(けついん)が司天となる年では、気が鬱滞するのを防ぎ、不足している気の生化(生命エネルギーの生成と循環)の源を補い、弱っている運気を助ける必要があります。そのうえで邪気が過剰に強くならないようにすることが重要です
そのための治療と養生の具体的な方法を以下に記します:
- 辛味を用いる
司天(上空)の風邪(ふうじゃ)を調整するためには、辛味のある薬や食物を使用します。ツボでいえば、金の性質をもつ経渠(けいきょ)や商丘(しょうきゅう)など。 - 咸味を用いる
在泉(地下)の火邪(かじゃ)を調整するためには、咸味(塩味)のある薬や食物を使用します。ツボは陰谷(いんこく)、虚火がある場合は照海を用います。 - 少陽相火への注意
少陽相火(しょうようそうか)は非常に強い性質を持つため、軽率に触れるべきではありません。以下のような慎重な対応が必要です:- 温性の薬を使用する場合は、温気が主となる時期を避ける。
- 熱性の薬を使用する場合は、熱気が主となる時期を避ける。
- 涼性の薬を使用する場合は、涼気が主となる時期を避ける。
- 寒性の薬を使用する場合は、寒気が主となる時期を避ける。
- 飲食による調養
飲食による養生も上記の原則に従い、その時期に適した性質のものを摂取します。 - 例外
ただし、気候が異常に変化した場合には、この原則に縛られる必要はありません。臨機応変に対応することが大切です。
これらの原則を守らなければ、病気を引き起こす原因となる可能性があります。
客主加臨(きゃくしゅかりん)
六気において、図1.1に示すように毎年循環する客気が固定した主気の上に加わることを、「客主加臨」と言います。このように分析することで、五行の関係を用いて移り変わる年毎の気候の常態と変化とを推測することができます。
方法としては、毎年固定して不変である主気の六歩に、毎年順々に推移する客気の六歩を重ねます。図1.1では最外層の緑色の六歩が主気をあらわし、その上に内側のピンク色の六歩が客気として重ねられています。
分析方法は、客気を主として考え、客気が生ずる、あるいは主気に勝つ場合は順であり、これに反すれば逆となります。
一般的には、順であれば気候の異常変化があまり大きくは生じず、逆であれば異常変化が比較的大きく、同気は気候の異常が特にひどく(倍烈ともいう)発病しやすくなります。それでは分析してみましょう。
先に2025年の各歩の期間を表します
(一歩は60日と87.5刻で4つの節気)。
そこから、上図を参考に、主気と客気を表に示します。
主氣と客氣との五行の関係(相生/相剋)から、各歩(期間)の順と逆を割り出します。
順逆の出し方は、客気を主として考えます。客気が生ずる、あるいは主気に勝つ場合は順であり、これに反すれば逆となります。
たとえば、第一歩については、客氣の陽明燥金が主氣の厥陰風木を剋する(勝つ)ので、順となります。第六歩をみてみると、客氣の少陽相火が主氣に剋される(負ける)関係にあるので、逆とします。
一般的には、順であれば気候の異常変化があまり大きくは生じず、逆であれば異常変化が比較的大きく、同気は気候の異常が特にひどく(倍烈ともいう)発病しやすくなります。
解説
一之気(大寒~驚蛰)1/20~3/19
主気:厥陰風木 / 客気:陽明燥金
寒さが厳しさを増し、殺伐とした気が漂い始める時期です。この影響で、人々は右側の下半身に寒さによる病気を患いやすくなります。これは陽気が人体右側から発露するためです。
二之気(春分~立夏)3/20~5/20
主気:少陰君火 / 客気:太陽寒水
寒気がまだ残り、雪が降り、水が氷となる季節です。殺伐とした気が草木に影響を与え、特に草の上部が乾燥して枯れやすくなります。また、寒冷な雨がしばしば降ります。一方で、陽気が戻ってくると、人々は体内の熱がこもる症状を患いやすくなります。内熱がこもると、めまい、イライラ、のぼせ、便秘、不眠、肌のトラブルなどが起こりやすくなります。
三之気(小満~小暑)5/21~7/21
主気:少陽相火 / 客気:厥陰風木
今年の司天の厥陰風木の氣が旺盛し、大風が吹くことが増える時期です。このため、人々は頭がくらくらするめまい、目が涙目になったり、耳鳴りを感じやすくなります。
四之気(大暑~白露)7/22~9/22
主気:太陰湿土 / 客気:少陰君火
湿気と熱気が交錯し、争うような気候が特徴です。この影響で、人々は黄疸やむくみなどの症状を患いやすくなります。
五之気(秋分~立冬)9/23~11/21
主気:陽明燥金 / 客気:太陰湿土
乾燥した気と湿気が互いに勝ったり負けたりする季節です。この時期、陰寒の気が降りてきて、風雨が頻繁に起こります。その結果、人々は悪寒、発熱、咳、喘息、腹部の膨満感、腹痛、下痢などの症状を起こしやすくなります。
終之気(小雪~小寒)1/22~翌年1/19
主気:太陽寒水 / 客気:少陽相火
この時期順逆は逆のため通常の気候よりも異常が起こりやすいと考えられます。少陽の火が強く、陽気が大きく作用し、暖冬が予想されます。そのため、虫が冬眠しにくく、流水が凍らなくなり、地中の陽気が発散し始めます。草木も生長し、気候が穏やかになるため、人々は快適に感じることが多くなります。しかし、発病すると温熱性の疫病が流行することがあります。
干支からわかる2025年運気のまとめと考察
ここからは、2025年の運気をできるだけ平易に、また現代人に諸問題に活かせる内容にして、まとめて解説してみます。
最後に養生に良いおススメのツボも載せていますので、チェックしてみてくださいね。
木気が正常の働きをする年
乙巳年は、中運が金運不及であり、司天は厥陰風木、在泉が少陽相火の年です。五行の金剋木という関係性により、中運である金運が、司天の厥陰風木を剋する(抑制する)ため、「不和」の年となります。
金運が弱まる年ということは、金が抑えるはずであった木運が働き、同時に司天も厥陰風木と木気であるため、2025年は一年を通して木気の性質が基本となる年であるといえるでしょう。
木気が平気となる年は「敷和」といって、穏やかな生長の気を布達して万物を栄えさせてくれる年となります。自然界では気が伸びやかに条達することで植物が繁茂し、動植物も色とりどり豊かになります。
ただ、木気が強くなると風が強まり、色々と運んでしまい、物事を進める作用も強まるため、人においては病気の進行も早まることが予想されます。
感染症が広まりやすくなったり、風気が舞い上がりイライラやめまいや頭痛、筋肉のひきつれによる身体の痛みなども起こりやすくなります。冒頭の五行の相剋関係により木気が土の気(消化器系)を抑えてしまうことから、四肢のだるさ、胃腸の不具合、下痢や便秘、食欲不振、筋肉の衰えなどの不調が起こりやすいため、胃腸が弱りやすい味の濃いもの・甘いもの・脂っこいものを摂りすぎないなど、食事に気をつけて胃腸を守りましょう。
木気による胃腸のトラブルのツボ
【太白(たいはく)】
足の太陰脾経のツボ。土の土穴なので、胃腸症状および運化作用を助けて、体重節痛、だるさなどをカバーできます。
場所は、足の親指内側のでっぱりを踵方向に降りたところの陥凹部。お灸をしましょう♪
脚の脛の外側にある足三里と合わせても良し。
木気盛んでイライラ、のぼせ、めまい、不眠の場合
【太衝(たいしょう)】
肝気が昂ぶり人身上部に気があつまったり、厥陰の気がうっ滞した場合に気機の流れが失調した場合に効果あり。
場所は、足の甲。足の親指と第2指との間の溝をなぞって足首の方にあがり、二つの指の骨が交差する手前のへこんだところ。
こちらは、指でもみほぐしたり、指圧棒で気持ちいい程度にに10~15秒呼吸とともに押して刺激しましょう。
少陽相火の影響
中運である金運が不及しており、在泉に位置するのが少陽相火であるため、火が金を剋すことで火気が強まると同時に金気が弱まります。
金運が弱いということは、金の性質である収斂の気が弱まり、万物の生長は促進される一方で、実を結ぶ力が足りないため、収穫が遅れます(特に白色の穀物、麦など)。
人身でいえば、金は肺や大腸の働きであり、呼吸器や体温調節といった機能が弱まりやすいと推測されます。適度な運動を保って、呼吸・体温調節・発汗力を維持しておきましょう。
少陽相火の影響で金運がさらに不足すると、火気と風気の影響が強くなり、地からの熱で風気が舞い上がりやすく、風熱の病が増えます。具体的には感染症をはじめ、のぼせやめまい、イライラ、目赤、ホットフラッシュ、のどの痛み、鼻づまり、不眠、肌のトラブルなどが起こりやすくなります。
そのほか、少陽の熱が陽明に波及すると、2025年は花粉症や熱中症で困る人も例年より増えることでしょう。
花粉症や頭顔面部の熱をとるツボ
【大椎(だいつい)】
頭を下げたときにもっとも出っ張る首の付け根の骨の真下。
【合谷(ごうこく)】
人差し指と親指の二本の骨がであう手前の陥凹部。
【曲池(きょくち)】
肘を曲げてできる肘の外のしわと、肘の外側の骨のでっぱりとの間。
1~3分ほど、ツボをマッサージして刺激しましょう
まとめ
ここまでをまとめると、
2025年は厥陰と少陽の邪気によって侵されやすく、太陰の病が発生しやすい年といえます。
厥陰と少陽は主に風熱邪です。
この風熱邪がどこから侵入するかによって発病の症状が異なるわけですが、木剋土、火剋金であることを考えると、おのずと太陰が弱りやすいことがわかります。
治療は風熱邪を抾邪して、太陰を扶正(補う)ことが基本となります。
外関-臨泣、陽輔、期門(日月)や風池、帯脈の臨泣などのツボを用いて邪を祓い、太白や太淵、列缺、中府などを補って治療します。火気が強い場合は、陰谷などの腎を補うことで対処する必要がでてきます。
東洋医学は天人合一の思想があり、天の運行、地の運行の中間に人がおり、天地の陰陽の気の推移と天地間の気の交流の影響を人が受けます。
鍼灸は、天や地の気によって人が栄養されなかったり、あるいは天候不順による淫邪となって人を侵したり、その土地の気と合わない生活をしていたり、はたまた天も地も正常に運行しているのに人そのものが弱ってしまった場合に、どこが問題かを把握して、ツボに適切な刺激を加えることで気血を動かし、アンバランスを調えるバランス医学といえます。
この記事では古代の記述をもとに、2025年の天地の運行を五運と六気によって推測したものですが、2025年はこうしたことを参考にしながら、施術を行なっていきます。
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