目次
はじめに
今年も書いてみました。最古の医学書である『黄帝内経』に記される運気学説に基づき2026年の気候変化や動植物への影響、人の健康への影響を推し量ったものです。専門的な用語がちょっと…という方や時間がない方は読み飛ばして頂いて、
記事の最後の「干支からわかる2026年運気のまとめ」の部分でまとめていますので、そこだけ読んで頂くと良いと思います。また、要点を先に読んでから、間の部分を読むことで理解しやすくもなりますので、目的に合わせてお読みいただければ幸いです。
本記事から、人が自然の一部であり、自然とともに調和しながら存在するという東洋医学の「整体観」と呼ばれる世界観を味わっていただけると思います。
多様に変化する自然の移り変わりの中にも不変の法則性があり、古代の科学が解き明かした陰陽と五行の法則をもとに未来の予測をたて、どのように人の身体への影響である医学の分野に役立てているのか、その様子をお伝えでき少しでも東洋哲学に興味をお持ちいただければ幸いです。
実際に今年の運気から、自宅でお灸などで養生できるツボの名前と場所も記載しておきますので、ご自身の健康にもお役立てください。
最古の医学書に記された運気論(五運六気)
五運六気(ごうんろっき)、略して「運気」と呼びますが、中国最古の医学書《黄帝内経素問》中にある天元紀大論・五運行大論・六微旨大論・気交変大論・五常政大論・六元正紀大論・至真要大論の七篇で構成され、総じて運気論と呼ばれます。
宇宙の法則および自然の気候変化がもたらす万物と人に対する影響を論ずる天人相応の論理思考と観念です。
2026年の運気を、医学の古典である『黄帝内経』に記述された内容に則ってまとめています。
自然現象や人の発病に関しても、かなり大げさではないかと思われる内容も書かれていますが、陰陽五行や五臓六腑の基本的な内容をおさえて、どのような影響があるのかをみていくと、なるほどと思わされる部分もたくさんみつかります。
最後に現代に役立てられる形でまとめておりますので、どのような一年になりそうなのか、養生法も含めてぜひご一読くださると嬉しく思います。

運気論の基礎
運気は、天干地支より導きます。天干地支というと分かりづらいかもしれませんが、「干支」のことで「かんし」と読みます。干支はもともと幹と枝のことであり、十干と十二支があります。
十干(じっかん)とは「甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸」のことであり、空間概念であり、五運を導きます。毎年の年運が異なるのは、毎年の地球の所在が異なることを反映するためです。
十二支(じゅうにし)とは「子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥」のことであり、時間概念であり、六気を導きます。毎年の地球の所在が異なれば、四季のように気候の温度変化もまた相応して年により異なるため、地球に存在する動植物や人間の生活、生まれもった性質、さらには政治や経済などにも影響を及ぼすと考えるわけです。
※1 五運とは、土・金・水・木・火の五気の運行のこと。上記甲己が土、乙庚が金、丙辛が水、丁壬が木、戊癸が火というように、十干を五行に配して、毎年の歳運(その年の運、年運とも。)を推し量る。『黄帝内経素問』天元紀大論篇では、五運は地の陰陽とも云われており、天の気を消費して「中央・砂漠・凍土・湿原・密林」の地域特性により地上の万物を栄養する。運とは、輪転運動し、往来してやまざるの意。 太過と不及の別があり、太過とはある気候が時期的に早く訪れること、不及とは季節の到来が本来の時期よりも遅れることを一般的にいうが、通常の気候の移り変わりからずれを生じたり、気候特性が色濃くなったり現れなかったり、また五行的な相生・相克の概念とともに論じられることも多い。 六気とは、風・熱・火・湿・燥・寒の六種の気を指し、三陰三陽及び五行と結びついて、それぞれ厥陰風木・少陽相火・少陰君火・太陰湿土・陽明燥金・太陽寒水と表し、十二支を配する。すなわち、巳亥が厥陰風木、寅申が少陽相火、子午が少陰君火、卯酉が陽明燥金、辰戌が太陽寒水に配する。十二支は、地支ともいい、中国の殷代において12年で天を一周する木星の軌道上の位置(天の位置)を示すための数詞であった。
五運も六気にも主・客があり、主運・主気は毎年変化することのない季節の移り変わりです。それに対して客運・客気はその年その年ごとに反時計まわりで移り変わっていくものです。下図で示しているのは主に六気の主気と客気です。
図には明記してませんが、毎年1月20日頃の大寒から始まるのが「初之氣」です。3日を気、5日を候、3×5=15日を気候=1節気としますから、初之氣から60日87.5刻=四節気(一歩という)ごとに二之氣、三之氣…というように移っていきます。これに主気・客気を配していきます。
図の最外層は主気(緑色)。外から三段目に客気(ピンク色)を示しています。主気は毎年変わることのない気ですから、
主気:厥陰風木→少陰君火→少陽相火→太陰湿土→陽明燥金→太陽寒水
の順で、年に関わらず必ずこの図に示す位置にあります。
一方の客気は、図をみてわかるように
客気:厥陰風木→少陰君火→太陰湿土→少陽相火→陽明燥金→太陽寒水
という移り変わる順番は変わりませんが、年ごとに反時計まわりに移り変わっていきます。例えば、2026年は司天の位置に少陰君火が位置していますが、2025年は2026年右間にある厥陰風木が司天の位置にありました。
ちょうど、主(あるじ)は動かずいつも同じ位置にあるのに対し、客(きゃく)は順番に入れ替わっていくようなものだといえるでしょう。
毎年客気が規則正しく移り変わればよいのですが、気候が常態に反することもあり、特殊な状況となることもあります。これら一般規律とは異なる常態変化には、『黄帝内経素問』の刺法論篇・本病論篇にある不遷正・不退位・升不前・降不下の区別があります。
図の最内層に示す「司天・在泉・間気」については、客気における六気の別称です。その年の上半期の気候を統率する客気を「司天」、下半期の気候を統率する客気を「在泉」とする理解もあります。
司天が陽の場合在泉は陰となり、逆に司天が陰の場合には在泉は陽となります。ここで、少陰と陽明・太陰と太陽・厥陰と少陽というように、図の対角にある気同士は相合して輪転します。少陰が上がればその対角にある陽明は下り、これが陰昇陽降となるわけです。
司天・在泉の遷移がうまく運び、天地の気の昇降が順調であれば、自然の生成化育の作用も良好であると考えるのです。

五行の相生・相剋関係について
運気論を展開するにあたり、五行の知識が必要となります。五行とは木・火・土・金・水(もく・か・ど・ごん・すい)の5つのエレメントであり、エネルギーの昇降出入の状態であり、自然界の移り変わりのフェーズを5つに分けたものとも言えます。
そして、五行の各属性は独立したものではなく、関係性をもち、各々扶助関係と制約関係によって全体のバランスをとっています。
具体的には、
- 相生関係=相手を生かす関係
- 「木→火→土→金→水→木」という循環で相手を生じる関係。
- 相剋関係=相手を抑制する関係
- 「木→土→水→火→金→木」という循環で相手を抑える関係。
下図を参考にしてみてください。

五運にも六気にも五行が関わっており、このような関係性を利用してその年、時節の運気を分析することが可能となります。
2026年:丙午(へい・ご)の一般的な気候
本年は60年に一度の「丙午(ひのえ・うま)」の年で、十干の丙(ひのえ)は火の兄(陽)。十二支の午(うま)は南方で火に属し、火気が二つ重なるので、情熱や強さを象徴する激動の年となると信じられてきました。「丙午生まれの女性は気が強く、男に勝る」「夫を不幸にする」といった迷信が流行し、1966年の丙午では、この迷信を信じる人が多く、前年比で出生数が大幅に減少したそうです。
しかし、五運の見方では、丙(ひのえ)は丙(へい)であり、丙(へい)は水運太過にあたります。すなわち、丙は水運に属し、陽干であるため太過であり、年運(歳運)は水運太過となります。太過というのは、先に説明したようにある気候が時期的に早く到来することを指します。一般的な法則では、陽年(大過)は本気が流行し、陰年(不及)は剋己の気が流行します。
2026年は、丙午の年運が天の六氣を剋する不和の年
2026年(丙午年)は、中運が太羽(水運太過)となり、司天が君火であるため、水が火を克し、不調和が生じる配置です。よって、年運(=五運)と天気(六気)の関係は「不和」となります。2025年も金運が木気を剋する不和の年でしたね。
この年の運気構造は次の通りです(図1.1参照)。
- 上(司天):少陰君火
- 中(歳運):太羽・水運太過
- 下(在泉):陽明燥金
※丙・辛は水運に属し、丙は陽年に当たるため、2026年は太羽・水運太過の年となります。
司天・中運・在泉の働き
それぞれの気数と特徴は次の通りです。
◎ 司天:熱化二(少陰君火)
- 方位:西南
- 勝復が起これば
→ 暑熱が盛んに立ちのぼる
→ 雨水が降る
◎ 中運:寒化六(太羽・水運太過)
- 方位:北
- 勝復が起これば
→ 寒と熱が交互に現れる
→ 大風が到来する
◎ 在泉:清化四(陽明燥金)
- 方位:西北
- 勝復が起これば
→ 大気が乾燥する
→ 雨水が降る
※不和とは、運が気に剋つ年で、「運が盛んで気が衰える」時期と考えられるため、今年の分析は五運を主として、六気を参考とするのが良いとされます。今年の運は太過のため、五運の影響が色濃く反映されるかもしれません。

年運の配列順序
今年の年運(歳運・中運)は丙年なので、水運太過です。水運太過は別名「太羽」と呼ばれます。
この呼び方は、「角・徴・宮・商・羽」の順でそれぞれ「木運・火運・土運・金運・水運」のことを表しています。それぞれに大過・不及があるので、大過は「太」、不及は「少」であらわされます。例えば、木運不及なら「少角」という具合です。五運の運行順序は五行の巡りそのままの順で巡っていきます。
本年の年運構造は以下のとおりです。
- 年運五歩:初之運春、二之運夏、三之運長夏、四之運秋、五之運冬。(図1.2 赤・青色部分)
- 主運五歩:初之運太角、二之運少徴、三之運太宮、四之運少商、五之運太羽。(図1.2 緑色部分)
- 客運五歩:初之運太羽、二之運少角、三之運太徴、四之運少宮、五之運太商。(図1.2 ピンク色部分)

丙午年水運太過(太羽)の影響-「流衍」と「封蔵」の年とは?
五運六気の考え方では、水の運気が過剰に強くなる状態を「水運太過」といいます。これは「流衍(りゅうえん)」とも呼ばれ、水の気があふれ出し、万物が漂い流れて落ち着けない。そんな状態を表しています。
この年は同時に「封蔵(ほうぞう)」の年とも言われます。強い寒さが万物の変化を支配し、大地と天空は厳しい冷えによって凝り固まり、外へ開く力よりも、内へ閉じ込める力が優位になります。そのため、本来なら外へ伸びゆくはずの「火」の性質(成長・発揚)は十分に発揮されにくくなります。
寒気が早く訪れる年の自然現象
水運太過の年には、寒気が盛んに巡り、季節外れに早く寒さがやってくることがあります。空には露や霧のようなもやが広がり、重く曇った日が続きやすくなります。また、土の気が戻ると大雨が降りやすいともいわれます。
からだに起こりやすい不調
寒の邪気が「心」を傷つけると、次のような症状が現れやすいと考えられています。
- 胸や心臓まわりの痛み
- 動悸
- 不安・いらだち
- うわ言・落ち着かない動き
- 悪寒と発熱
- 手足の冷え
さらに水の邪気が強くなりすぎると、
- お腹や下肢のむくみ
- 腹水
- 咳や息切れ
- 寝汗
- 風に当たるとつらい
などの症状が出ることもあります。
金運との関わり
これらの性質は「金運」とも対応しています。金運は、
- 凛とした冷気
- 固まり締まる性質
- 静けさを守る力
をもち、その働きは流れ、注ぎ、下へ降り、ときに外へ溢れます。気候としては氷・雪・雹などの形で現れます。
臓腑では腎と心、経絡では足少陰・足太陽に関連し、変調が起これば「張る・むくむ」といった症状につながるとされています。
どのように養生すればよいか
このように寒の力が強く働く年には、身体も冷えの影響を受けやすくなります。伝統医学では、このような寒化による中運の病に対して、
👉 塩味で温性の食べ物・薬をほどよく用いる
ことが調和につながると考えられてきました。
具体的な食材やツボ、日常の養生法については、体質によって異なりますので、専門家に相談しながら取り入れていくことが大切です。
丙午年の「司天/在泉(してん/ざいせん)」とは?
丙午の年は、天と地をめぐる六気のうち、
- 上(天)には少陰君火が司天
- 下(地)には陽明燥金が在泉
という配置になります(図1.1参照)。
簡単に言えば、
- 天には「君火(強い火の気)」が位置し
- 地には「燥金(乾燥・清潔化させる金の気)」が満ちている
という一年です。
その影響で、
- 大地は乾燥して清らかになりやすい
- 寒涼の気がしばしば訪れる
- 肅殺(粛清して収斂させる力)が働く
- 草木の様子も変化しやすい
などの特徴が表れます。
病としては、
- 脇の痛み
- ため息が多くなる
などが現れやすいと考えられています。
ここから先は、1年を六つの期間(六気)に分け、順にその特徴を見ていきます。

客主加臨(きゃくしゅかりん)
これまでは五運の分析でしたが、ここからは六気の分析となります。
2026年は五運が六気を剋する(抑制する)不和の年(水運が君火を抑える年)なので、一般的には五運の分析を主とするわけですが、六気の分析が不必要なわけではなく、参考としますので関わってくるわけです。特に六気の分析の方が細かくみていけるため、やはり重要となってきます。
六気には主氣と客氣があるということは先に述べました。六気の分析では、主氣と客氣とのかかわり方をみていきます。
六気において、図1.1に示すように毎年循環する客気が固定した主気の上に加わることを、「客主加臨」と言います。このように分析することで、五行の関係を用いて移り変わる年毎の気候の常態と変化とを推測することができます。
方法としては、毎年固定して不変である主気の六歩に、毎年順々に推移する客気の六歩を重ねます。図1.1では最外層の緑色の六歩が主気をあらわし、その上に内側のピンク色の六歩が客気として重ねられています。
分析方法は、客気を主として考え、客気が生ずる、あるいは主気に勝つ場合は順であり、これに反すれば逆となります。
一般的には、順であれば気候の異常変化があまり大きくは生じず、逆であれば異常変化が比較的大きく、同気は気候の異常が特にひどく(倍烈ともいう)発病しやすくなります。それでは分析してみましょう。
先に2026年の各歩の期間を表します
(一歩は60日と87.5刻で4つの節気)。

上の表は2026年の「主氣」の期間をまとめたものです。

次に、図1.1を参考にしながら、主氣と客氣の関係を記述してみます。

【解説】
主氣と客氣との五行の関係(相生/相剋)から、各歩(期間)の順と逆を割り出します。
順逆の出し方は、客気を主として考えます。客気が生ずる、あるいは主気に勝つ場合は順であり、これに反すれば逆となります。
たとえば、第一歩については、客氣の太陽寒水が主氣の厥陰風木を生ずるので、順となります。第三歩をみてみると、客氣の少陰君火と主氣の少陽相火が同じ「火」の関係にあるので、「同氣」とします。
一般的には、順であれば気候の異常変化があまり大きくは生じず、逆であれば異常変化が比較的大きく、同気は気候の異常が特にひどく(倍烈ともいう)発病しやすくなります。
2026年の客主加臨によって導き出された結果をみると、第三歩と第四歩が「同氣」であるため、小満~白露の間は激烈な気候となりやすい傾向がよみとれます。
以下、客主加臨から導き出された2026年の各歩で予想される具体的な気候の傾向を記します。
初之気(大寒〜驚蟄)
- 主気: 厥陰風木
- 客気: 太阳寒水
前年の「在泉の気」が退き、少陽の暑は衰え始め、寒気が訪れ始めます。
- 蟄虫はふたたび隠れ
- 水は氷となり
- 霜や雪が降り
主気の「風」に客気の「寒」が加わるため、冷たく厳しい風となり、陽気は鬱して発散しにくくなります。
このあと暑さが発動し始めるため、
- 体表・体内の瘡や腫れ
- 関節のこわばり、動きにくさ
- 腰や臀部の痛み
などが出やすい時期とされます。
→ そのため
「寒さを避け、用心して過ごす」生活がすすめられます。
二之気(春分〜立夏)
- 主気:少陰君火
- 客気:厥陰風木
陽気が伸びやかに広がり、風も行き渡ります。
「春の正しい気」が働き、自然界は繁栄へ向かいます。
寒さが訪れることもありますが、
- 主気と客気の両方が「陽」に属するため
人はおおむね穏やかに過ごしやすいとされます。
起こりやすい症としては、
- 小便の出づらさ
- 目がかすむ、充血する
- 上焦に気がこもると発熱性疾患
などが挙げられます。
三之気(小満〜小暑)
- 主気:少陽相火
- 客気:少陰君火
司天の火に加え、主客ともに火。
つまり火が非常に盛んになる時期です。
- 大火が旺んに行き渡り
- 草木は勢いよく繁盛し
- 光は鮮明になる
ただし、時折寒気も差し込みます。
この時期には、
- 気が逆上して胸痛
- 寒熱往来
- 咳や喘息
- 目の充血
などの症状が出やすいとされます。
四之気(大暑〜白露)
- 主気:太陰湿土
- 客気:太陰湿土
主客ともに太陰湿土。
つまり「湿」が非常に強くなる時期です。
- 暑さと湿気が同時に至り
- 大雨が降り
- 寒熱が入り混じる
ことが特徴です。
生じやすい症状は、
- 寒熱
- 咽の乾き
- 鼻塞
- 吐血・鼻血
- 黄疸
- 水飲(体液停滞)
など。
五之気(秋分〜立冬)
- 主気:陽明燥金
- 客気:少陽相火
烈しい火の気が降り、
そこへ再び陽気が入り混じります。
その働きにより、
- 再び生長・繁栄の姿が現れる
- 人は比較的安らかに感じやすい
とされます。
ただし、**温病(発熱性の病)**が起こりやすい時期でもあります。
終之気(小雪〜小寒)
- 主気:太陽寒水
- 客気:陽明燥金
燥気が盛んとなり、
その収斂作用によって五之気の余った火が内にこもります。
すると、
- 上部の腫れ
- 咳・喘息
- 出血
- 皮膚症状
などが起こりやすくなります。
邪が脇にとどまり下へ及ぶと、
少腹にまで冷えが波及することもあります。
丙午年の全体像
この年は、
- 少陰君火が司天
- 陽明燥金が在泉
であることから、
- 火熱が地に臨み
- 燥金が働き
- 草木は損なわれやすい
とされます。
火熱が盛んになると、
- 金石さえ溶かすほどの勢いにたとえられ
- 瘡瘍や高熱などの病
が発生しやすくなります。
肺は天と通じる臓とされるため、
- 寒熱
- 喘息
- 嘔吐
- くしゃみ・鼻水・鼻閉
- 鼻血
なども現れやすいと考えられています。
病の位置関係
- 熱性病変 → 上半身に多い
- 寒性病変 → 下半身に多い
- 中焦 → 寒熱が交錯しやすい
具体的には、
- 咳嗽・喘息
- 咽喉の乾き
- 上部の腫脹
- 上衝の出血または下血
- 鼻閉・噴嚏
- 目の赤みや目頭の腫れ
さらに寒気が胃に逆入すると、
- 心痛
- 腰痛
- 腹満
などが発生するとされます。
草木・虫・穀物への影響
- 羽虫:司天の気に同調し、増減少ない
- 介虫:在泉の気に同調し、生じやすい
- 毛虫:金が木を抑えるため生じにくい
また、
- 陽明燥金在泉の年は湿毒や酸味の作物は育ちにくい
- 辛・苦・甘の味のものはよく実る
- 穀物では赤色・白色のものに応じる
とされます。
養生・治療の基本方針
この年に起こる病の背景には、
- 司天の「熱化」
- 在泉の「清化」
が関与します。
そのため、
- 司天の熱による病 → 味咸・性寒の薬食
- 在泉の清燥による病 → 味酸・性温の薬食
が適するとされています。
これを「性味を合わせる」と表現します。

異常(反常)として起こる変化について
ここまで述べた運気の配置が順調に推移すれば、その年の特徴は比較的読みやすくなります。
しかし、本来退くはずの気が退かず、位置が入れ替わらない場合には、気の流れが乱れ、さまざまな異常が起こります。
これを「異常変化」と呼びます。
前年の厥陰風木が退かない場合
もし前年の「厥陰風木」が退かずに残ってしまうと、次のような現象が生じやすくなります。
- 大風が早くから吹きはじめる
- 時雨が降りにくい
- 湿がはたらくべきところで施化しない
そのため人には、
- 疫病
- 斑疹
- 片側の運動障害
などが現れることがあります。
風気が強く動くと、
- 関節の痛み
- 頭痛・目の痛み
が広く見られるようになります。
また、内に伏した熱が動くと、
- 心煩
- 咽の乾燥
- 口渇多飲
といった症状が現れやすくなります。
厥陰風木が退かない(不退位)と君火も正位に就けない
前年の厥陰風木が退かない場合(不退位)、
本年の少陰君火は本来の位置につくことができません。
すると、
- 冷気が退かない
- 春であるにも関わらず、先に冷えてさらに寒くなる
- 温暖な気が本来の時期に発揮されにくい
という季節の逆転が起こります。
その結果、人には
- 寒熱の往来
- 四肢の痛みとだるさ
- 腰背の強ばり
などの症状が起きやすくなります。
ただし、前年の木気が余っているとはいえ、
その影響は 主気・二之気の君火が本格的に働き出す頃まで とされ、それを超えて長く居座ることはできません。
太陽寒水が降りられない場合
太陽寒水は、
- 前年司天の右間 → 本年在泉の左間
へと降りるべきものですが、
もし地の土気が盛んすぎると、寒水は地中に降りにくくなります。
すると、
- 天空には黒く陰鬱な気が広がり
- 昼なお暗いような景色となり
- 黄塵のような霧が漂う
という状態が生じます。
寒の布化が始まる一方で、
- 熱化
- 湿化
が入り交じって現れます。
また寒水が長く降りられず伏してしまうと、
- 天気は陰鬱
- 熱と湿が入れ替わり立ち替わり起こる
といった不安定な状態になります。
その際、人には
- 大厥(意識消失に近い状態)
- 四肢がだるく重い
- 陰萎・性機能低下
などが見られるとされます。
太陰湿土が昇れない場合
太陰湿土は、
- 前年在泉の右間 → 本年司天の左間
へと昇るべきですが、
もし天の木気(天冲木)が強すぎると、
土気は前進できず登れなくなります。
すると、
- 風と土の気が混じった塵が舞い上がる
- 雨湿の運化が妨げられる
という気象が現れます。
人には、
- 風厥
- 痰涎がこみ上げる
- 半身不随
- 腹部膨満
などの症状が出やすいとされます。
湿土が昇れず鬱すると何が起こるか
土気が上がらないまま滞ると、
やがてそれは鬱となります。
鬱が極まれば必ず発となり、
湿は布化できず、雨水も減少します。
その結果、
- 土気より生じる疫病の発生
- 六腑の膨満・閉塞
- 黄疸
- 顔や手足の病変
- 五穀の枯死
などが起こると記されています。

少陰司天の年における基本対策
少陰司天の年(子・午年)においては、組み合わせ的に必ず歳運が太過します。
そのため
- 太過する気を抑える
- 歳気が勝つ気を助ける
- 急激な変化となる鬱気と発気を減らす(今年の場合は火気)
ことが重要とされます。
治療や飲食では、
- まず「勝てない気」の根源から整える
- その年の気を急激に動かさない
という態度が大切です。
また、
- 歳気に応じた穀物は正気を保つために役立ち
- 間気に応じた穀物は外邪を避けるのに役立ちます
とされます。
飲食・薬味の選択の原則
基本的には次のように合わせます。
- 上部を柔らげる → 咸味で軟らげる
- 甚だしい → 苦で発散
- 下部を安んずる → 酸で収める
- 甚だしい → 苦で瀉する
また、
- 中運と司天が共に熱 → 寒涼を用いる
- 中運と在泉が共に凉 → 温熱を用いる
という対応を行います。
●注意すべき点
- 熱性薬は熱気の主令期を避ける
- 寒性薬は寒気の主令期を避ける
- 温性薬は温気の主令期を避ける
- 涼性薬は涼気の主令期を避ける
飲食による養生でも同様です。
ただし、
もし気候自体が大きく反常に傾いた場合は
その原則に固執しすぎないこと
とされています。
つまり、
- 原則はある
- しかし現実の気候に応じて柔軟に調整する
これが運気論における基本姿勢です。
丙午年の五運六氣まとめ
2026年(丙午年)の運気は結論として、
- 上(司天):少陰君火
- 中(歳運):太羽・水運太過
- 下(在泉):陽明燥金
という構造でした。
「丙」から導きだされる歳運(中運・年運)=水運太過
「午」から導き出される六気=少陰君火
との関係をみた時に、水が火を剋する(抑制する)という五行の制約関係により、運が気を剋するという関係にあります。
運が気を剋する年を「不和」といいます。そのうえ、今年の丙は陽年であり、水運が太過であることを示しています。
太過である運が気を剋する場合、一般的に五運と六気では「五運」の方を主として分析することなり、「六気」は参考とします。
よって、2026年丙午年は「水運太過」の影響を主としてみていくのが普通となります。
五運は地、六気は天ですので、地の気が影響しやすいとも解釈できるかもしれません。
すなわち、紀年が丙年の少陰君火司天の年は、地の気である水運が、天の気である君火を抑えつけ影響大となるため、『黄帝内経』には運は寒、その化は凝惨凓冽、その変は冰雪霜雹、病は寒下であると記載されており、寒気が地に降りやすいことがわかります。
2026年は、先述したセクションの「丙午年水運太過(太羽)の影響-「流衍」と「封蔵」の年とは?」という部分を読んでいただくと、どのような影響があるかということをまとめていますので、わかりやすいかと思います。
要するに、寒気が地に降りやすく、寒邪(寒淫)が人体を襲いやすく冷えやすい年であるということがわかるでしょう。
寒の邪気(冷え)は少陰というグループである腎や心を主に傷めつけます。そうすると出てくる症状は、先のセクションでまとめたものになるわけです。
特に生まれ年から算出される「火」の気が少ない体質の人や、冷えやすい陽気不足の人では不調が多い年になるかもしれません。
2026年は一年を通して「寒・水」の性質があるわけではなく、寒により抑えつけられた火気は鬱気や発気となり、異常な変化として夏に暴走することがあります。
それを表すように、六気を分析した際には(「客主加臨」のセクションを参照)、
第三歩(小満~小暑)、第四歩(大暑~白露)において、その気が重なる「同氣」となるため、激烈な気候変動の起こる可能性が考えられます。
その場合には、上半身は君火による熱に襲われ、下半身は水運・燥金により冷えるという上実下虚・闕逆の状態や寒熱往来となりやすいことが予想されます。
寒さが続くかと思うと夏に急に熱くなり熱暑と湿熱の混じる気候に変化して、人々は急激な気温変化に悩まされるでしょう。
2026年の養生は少陰経と呼ばれるグループである心・腎の冷えが起こらないようにすることです。また、夏や長夏に邪気が亢進し、心火が強くなり冷えのぼせのような状態に陥ったり、土の邪気により湿の影響を受けることを考慮しつつ過ごす必要があります。
2026年の養生ツボ
本年は上述したとおり「心腎陽虚」に陥らないように、温補心腎・散寒通水を念頭に過ごすとよいでしょう。要するに、心と腎を補って心腎の機能強化をおこないつつ、体を温めるツボや、余分な水気が停留したり、血行が悪くならないような養生のツボにお灸を据えてすごしましょう。

【関元のツボ】
関元は下半身の虚を助け、温腎壮陽、培腎固本の作用があります。
お臍の下、指約4本分のところにあります。

【神門のツボ】
心神を安静させて、心気を補います。
手首のしわの小指側にあるツボです。

【三陰交のツボ】
三陰交の運化能力によって、心腎の交通を促します。
足のうちくるぶしの上指4本分のところにあります。















水運の気は寒冷を主ります。
→ 凝斂(収斂)・凄惨・寒風・冷え込み
→ 氷・雪・雹といった現象
→ 寒気が下に集まる