「猫背になってますよー」「巻き肩ですね」「反り腰もあります」
エステや整体に行ったときに、こんなふうに指摘された経験はありませんか?
鏡に映った自分の姿を見て「確かに背中が丸いかも…」とがっかりしたり、結婚式やイベントでドレスを着るときに「もっと姿勢を良く見せたい」と思ったり。あるいは、人から言われて急に気になってしまったり。中には「このまま歳を重ねると、本当に背中が曲がってしまうんじゃないか…」と不安を抱えてしまう方も少なくありません。
私がこれまで診てきた患者さんの中にも、同じような悩みを抱えて来院される方がたくさんいます。共通しているのは、「姿勢を指摘されるけど、どうやって直せばいいのかは誰も教えてくれなかった」という声です。
目次
なぜ猫背や巻き肩になってしまうのか
姿勢が崩れる原因はひとつではありません。
- 長時間のデスクワークやスマホ操作で頭が前に出る
- 座り方や座る環境が悪くて猫背になってしまう
- 心理的なストレスで自然と体が縮こまる
- 背が高いのがコンプレックスで、背を低くみせようと猫背になってしまう
- 圧迫骨折などの外傷によるもの
中にはベンチプレスなどで胸筋を鍛えすぎて巻き肩になってしまっている人もいました。このように猫背・巻き肩の原因は人それぞれです。
その中でも最も多い原因は、やはりスマホや長時間のデスクワーク。作業やコンテンツの視聴に集中するあまり、姿勢のことは忘れてしまいがち。動かないままじっと同じ姿勢を続けることで、筋肉の滑走姓(滑り)や関節の潤滑、動きが悪くなり、かたまってしまいます。
こうした日常の習慣や気持ちの状態が、少しずつ姿勢を変えていきます。特に「猫背・巻き肩・反り腰」はワンセットのように指摘されることが多く、悩みを大きくしてしまう要因になっています。
姿勢が悪いとどうなる?
猫背や巻き肩姿勢が定着してしまうとどんな弊害があるでしょうか。
猫背や巻き肩になると、まず頭部の前方変位がおこります。つまり頭や顎が前に突き出された状態。
このような姿勢では肩首への負担が大きくなり、首や胸のリンパが阻害され、お顔のむくみやしわ、頭痛や肩こりを引き起こします。
もう一つは、前かがみのような姿勢となるので、胸やお腹を圧迫することで、呼吸が浅く、お腹がポッコリでてしまい、胃部不快感や消化器系の異常を感じやすくなります。首の緊張や呼吸の浅さからリラックスできず、交感神経優位となり自律神経の不調に悩まされやすくなります。
重心が前方に集中しやすいので、腰痛やふくらはぎなどのこわばり→下肢の循環不良から足のむくみや冷え症まで、全身にわたり不調をきたしてしまうおそれが容易に想像できるでしょう。

正しい姿勢ってそもそも何?
多くの方は「正しい姿勢=胸を張って腰を反らせて顎を引くこと」だと思い込んでいます。でもずっとそんな姿勢でい続けることは現実的じゃないですよね。そもそも長続きしないんです。
本当に大切なのは、頑張らなくてもラクに保てる姿勢。骨格が自然に重力に対応して、余計な筋肉の緊張がない状態です。
言い換えると、「力を抜いていても崩れない」姿勢こそが理想。決して「意識して頑張る姿勢」ではありません。
ここでひとつ、え?そうなの!?と意外かもしれないことを。
よく姿勢をよくするために「顎を引いて」と言われたことがあるかもしれませんが、顎を引いて姿勢をよくしようとするとどんどん「ストレートネック」になってしまいます。
顎を引くと首のアーチが消失して首の後ろの関節が開いてしまいます。
アーチがなくなればストレートネックをつくってしまうわけです。これは、胸椎の曲がりや巻き肩、腰の状態を直さないで顎だけ引こうとすることでも助長されてしまいます。

一般的には上図のような姿勢が正しいとされています。耳たぶ・肩の先端・足の付け根・大転子(股関節の外側の出っ張り)・膝・外くるぶしが一直線に並ぶ姿勢です。
姿勢が整うと起こる変化
猫背や巻き肩が改善すると、見た目の印象だけでなく、体や心にもいい変化があります。
- 鏡に映る自分がすっきり見え自信がもてる
- 呼吸が深くなり、疲れにくくなる
- 肩こりや腰の違和感が軽減する
- 気持ちが前向きになりやすい
結婚式や写真撮影など特別な日だけでなく、普段の生活でも「自分の姿勢に自信が持てる」ことは大きな安心感につながります。
力まずに姿勢を整えるコツ
力まずに正しい姿勢をつくるには、いくつかのツボを覚えてもらって、イメージを利用します。一度そうした姿勢をつくれば、今まで働いていなかった筋肉が働きだすので、しばらく効果が続きます。
大切なのは、力まないこと。イメージを利用しますが、強く意識するわけではなく、なんとなく軽くイメージすることがコツです。
それでは解説します。
手順1:後頂のツボを天に向けて引っ張られるイメージをする

一つ目のイメージで使うツボは後頂(ごちょう)というツボです。
後頂(ごちょう)というツボは、百会(ひゃくえ)というツボのすこしだけ後ろにあります。
なので、百会のツボの位置をまず覚えてください。
百会のツボは、両耳の頂点を結んだ線が頭のてっぺんと重なったところにあるツボです。そのほんの少し後ろにあるのが、後頂(ごちょう)というツボですね。
この後頂のツボにヒモをつけて、点に向かって引っ張られるイメージをしてみてください(天井から吊り下げられるイメージでもいいです)。
強くイメージするというよりは、力まずに軽く引っ張られるイメージをしてみてください。
この時点では、ほんの少し背が伸びたような、なんとなくの感覚があれば大丈夫ですよ
手順2:大椎のツボを後ろ襟にそっとつける

「大椎(だいつい)」とは、首の第7番目の骨のことです。
首を前に倒して頭を垂れたときに、背中側の首の付け根のところで一番出っ張って触れる大きい骨です。
わかりにくければだいたいで構いません。図を参照してください。
(ツボとしては、その7番目の骨と8番目の骨との間が大椎のツボなのですが、ここでは首の第7番目の骨が大椎のツボであると思ってください)
手順1で後頂のツボを引っぱりあげたイメージはそのままに、今度は大椎のツボを、そっと今着ている服の後ろ襟に軽くつけるようにイメージしてみてください。
どうでしょうか?
これで顎が自然に引けてさきほどよりもいい位置に頭がきたかと思います。軽くイメージするくらいでいいですよ☆
大椎をわずかに後ろに張り出すようなつもりで。
このようにすれば、肩が若干前にでてしまうと思いますが、それでかまいません。
後頂のツボを上に引っ張りあげながら大椎を後ろに張ると、肩が前にいきはしますが、背中が丸くはならないはずです。胸を張ることが良い姿勢ではなく、胸は若干円弧を描くようにたわませるのがポイントです。
命門のツボを後ろに張り出す

さて、上半身の姿勢がとれたら、あとは下半身の姿勢を調整してみましょう。
これは少し難しいかもしれませんが、
「命門(めいもん)」というツボを覚えてください。命門はお臍の真ウラにあります。ここは生命エネルギーの源があつまる場所とされ、とても重要な場所です。
この命門のツボを少し後ろへと張り出すイメージをもってください。
張り出すというイメージが難しければ、服の背中側にそっと命門のツボを近づけるイメージで。
そのようにイメージするだけで、自然と少しだけお腹に力が入るはずです。
お腹に手をあてて、下腹に少し力が入ったところがちょうどよい位置。
この状態で、鏡で横から姿をみてみてください。
おそらく、真っ直ぐに立てているはずです。イメージできたら、そのイメージの余韻だけのこして、あとは忘れてかまいません。
ずっとイメージしていることは無理ですし、このイメージを1日1回繰り返しているだけで、必要な筋肉と意識が教育されて、自然に正しい姿勢をとれるようになります。
重心は踵と土踏まずの間で微調整する
さいごに、立っているときの足裏にかかる重心の位置をお伝えします。
重心の位置は、できるだけ足の「踵と土踏まずの間」の幅に自分の重心がのるようにしてみてください。
前や後ろに行き過ぎると、前後の筋肉に余分に負荷がかかります。
③の命門を少し後ろに張り出すイメージをして、下腹にちょっと力が入ったあたりで止まれば、ちょうど「踵と土踏まずの間」に重心がきているはずです。
最初はこれでいいのかな?と分かりづらいと思いますが、徐々に感覚が馴染むとよりしっくりきますので、ぜひ続けてみてくださいね!
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