- 産後に腰痛がひどくなってなかなか治らない。
- 腰痛や股関節の痛みが抱っこや授乳姿勢で悪化してしまう
- 体型の崩れから産前着れていたジーンズがはけなくなった。
- 尿漏れ・頻尿がおきて、他人には相談しにくい・・・
- 便秘や下腹部のぽっこり
- ホルモンバランスや自律神経の乱れによる不調
産後に起こりやすいお悩みとして、このようなことがあてはまりません?
お産の際に骨盤が開いてしまうことにより、こうした症状に悩まれるケースは多く、場合によっては産後数年、数十年続いておられたという方もいらっしゃいます。
適切な処置が必要な場合がありますので、順に解説していきましょう。
目次
出産時には骨盤が開いてしまう
出産は、特に東洋人にとっては多大な負担が骨盤にかかってしまいます。
その原因として、骨盤の形状に問題があります。
どのような違いがあるのか、日本人女性と欧米人女性の骨盤をイラスト化してみました。
比べてみてください。

日本人女性の骨盤は小さく浅く、骨盤の出口や産道が狭いのに対し、
欧米人女性の骨盤は大きく深く、骨盤出口や産道が広いという違いがあります。
胎児の頭が骨盤口からでる時、欧米人女性は広く円形なので、ほとんど引っかかることもなくスルッと出ていきます。胎児にとっても母体にとっても負担が少なく、欧米の病院では翌日退院も珍しくありません。
一方で、日本人女性の場合骨盤口が狭いため、胎児の頭はそのままでは出てこれません。
どうすれば赤ちゃんは産まれてくるのでしょうか?
骨盤の前にある恥骨結合と後ろにある仙腸関節を一時的に脱臼させて、骨盤の口を開けてから産まれてくるわけです。
これはとても大変なことで、骨盤の前にある恥骨結合という軟骨性の結合(半関節)は、最大2~4cmも開くとされています。これにはホルモンが関わって関節を緩めようとする作用でもあるため、生理的な現象でもあります。
しかし、胎児の頭が骨盤口から出てくる際に、ガコン!といった形で仙骨や骨盤が動いて開いてでてくるため、一時的に脱臼状態となりすぐにまた元位置にもどればいいのですが、
元位置まで戻らず骨盤が開いたまま異常な位置関係でおさまってしまう場合があるわけです。この場合は亜脱臼もしくは捻挫のような状態といえます。
非常な負荷が日本人女性の場合骨盤にかかってくるわけで、お産の後はすぐに立ちあがることができません。そんなわけで、日本人女性の場合、初産の場合は1週間程度の入院が必要となるのです。
これが、アメリカやヨーロッパで日本人女性が出産となると、すぐに退院させられようとするので大変なわけです。
昔は日本人女性は、出産の後は実家に帰り、育児は家族にお願いして、出産後も腹帯(さらし)をして、産後8週までは養生(安静)をしていました。現代は退院後すぐに育児や家事で骨盤が閉まりきらないうちに動かないといけないので、開いたままになってしまうことが多いと感じています。
もし骨盤が開いたままだとどのような弊害があるのでしょうか。

産後の骨盤の開きによる弊害
2子目不妊や子宮脱の原因に
骨盤が緩んだり開いてしまうと骨盤底筋が働きにくくなり、2人目の不妊や子宮脱(膣口から子宮がでてきてしまう)の原因になります。
しつこい痛みの原因に
骨盤が開いてしまうと強い痛みがでる可能性があります。
骨盤の後ろから股関節の前にかけて半周にわたり痛みがでるケースもあります。
数年経っても腰痛がなかなか改善しないというケースが多く、日によって痛みがマシになったり強くなったりを繰り返します。
ひどい場合は歩行がびっこをひく形となり、歩行困難となります。
育児・家事に支障をきたします
なかなか痩せない、ぽっこりお腹
骨盤が開くので脚や腰まわりが太くみえたり、姿勢にも影響するため下腹がぽっこりとでた姿勢につながりやすくなります。歩きにくかったり痛みをかばったりするので代謝が悪く痩せにくい身体となります。
尿漏れや頻尿
骨盤が開くことで、筋肉や神経が牽引され働きが低下します。骨盤底筋・括約筋の筋力低下や神経系の伝導低下および腹圧が維持できないために尿漏れや頻尿(残尿感)が起こります。
ホルモンバランス・自律神経の異常
骨盤のずれ・歪みにより仙骨のうなずき運動が阻害され、脳脊髄液の灌流が低下することで脳機能・自律神経の異常につながることがあります。脳の下垂体がホルモンバランスと関わるため、ホルモンバランスの異常へと進展します。
出産時に生じる骨盤の歪みは難治性の特殊な歪み
産後の骨盤矯正というのをよく聞くと思いますが、産後の骨盤の状態は重症度の高いもので、そうそう簡単に治るものではありません。かなり専門的な知識が必要です。それは、産後におこる骨盤の歪みは、通常の骨盤の歪みとは異なることがあるからです。
通常よくみらる骨盤の歪みは、下図のように骨盤の骨(寛骨)が前上方へと回転して緩んでしまうタイプ(ズレの方向である、前方=Anteriorと後方=Superiorの頭文字を合わせて「AS」と呼びます)であり、これはギックリ腰などの腰痛につながる歪みです。

この通常タイプの骨盤の歪みは、重い物を持ち上げたり、中腰姿勢が続いたり、悪い姿勢で座っていたり、自転車や乗り物に長時間乗っていることで発生しやすいズレで、育児中にも中腰姿勢や子供を膝にのせたり抱っこするなどの無理な姿勢をとるため、発生しやすいタイプの腰の歪みではあります。
この通常タイプのズレ(AS)は、前上方へと回転してしまった骨盤を戻せば痛みは消失する上に、歩行を重ねれば症状が落ち着いてくることもあります。
一方で、産後の骨盤の場合は前上方へとズレた上に、左右に開いてしまうタイプのズレで、外方引き出し型の損傷(ASEX)と呼びます(下図)。

この産後の骨盤特有のズレは、生活していればたまたま戻っていくということはありません。
そのため自然に治癒するということがほぼなく、腰痛にかぎらずかなりきつい不調をきたします。重度の場合は歩行に支障をきたすこともあります。
当院に来られた患者さんの中には、産後から60代になっても、股関節から腰の周りに鈍痛を感じておられ、どこに行っても良くならず痛みをひきずっておられた方がいらっしゃいました。
また、骨盤が開くことによって、子宮脱や脱肛、膀胱脱などを起こすことがあります。
巷で産後骨盤矯正という言葉をあちこちでみかけるようになりましたが、出産時における本格的な骨盤のズレ(外方引き出し型損傷)が生じた場合、大変高度な技術を要するため、そんなに簡単には治せません。施術には長年の経験と技術を要します。
出産だけではなく産後の育児でも骨盤はズレる
産後まだ骨盤が安定していない状況での育児においても骨盤がズレやすいシーンはたくさんあります。
そもそも疲労しているため、筋肉・神経の働きも鈍るためより安定性が失われるので疲労も骨盤のズレを助長します。
あかちゃんのおむつ変えや入浴などで中腰やしゃがむ動作が増えますし、抱っこの回数も多く何かと手をとられます。
子供を抱っこする際、よく片側の骨盤を斜めに上げて、その上に子供のおしりを乗せて抱っこすることも多いと思うのですが、この時、骨盤の関節面は地面と垂直位となり、そこに子の体重がかかるので、骨盤の関節(仙腸関節)面に剪断応力(引き違う力)が生じます。
楽なのでついついとってしまいがちな抱っこの姿勢が、実は骨盤の歪みに大きく関わっていることも意識してみるとよいでしょう。

産前産後は腹帯をしよう!
産前・産後は骨盤の離開を防止するため、腹帯でしっかり固定しておくことが大切です。
腹帯はただの縁起担ぎではありません!
先述したように西洋人女性は骨盤がもともと広いので問題ありませんが、我々東洋人は骨盤口が狭いため、しかたないことですが、腹帯は必須となります。するかしないかで、その後の人生がまったく異なりますから、腹帯は面倒くさがらずやっておくことを強くお勧めします。
腹帯は、非伸縮の「さらし」が最も良いのですが、巻く際と、巻いた後にまき直したり、洗濯後に干したりがかなりの労力です。市販のものであれば、「犬印妊婦帯/たんじょうⅡ」などが手軽でしっかりしていてお勧めです。
巻き方はたんじょうⅡのサイトに書いてあるので、それを参考にされるとよいですが、厳密には妊娠時期によりまく位置を変えなければなりません。
具体的な注意点としては、お腹の膨らみ(頂点)より下の位置で交差させなければなりません。もしお腹の膨らみの頂点よりも上の位置で巻いてしまった場合、圧力が上からかかるため赤ちゃんが早く出てきてしまうような圧力がかかるので危険です。
また、骨盤を締めるのが目的ですので、お腹を圧迫することが目的ではありません。巻く位置も注意しましょう。
骨盤が開いてしまうと、赤ちゃんも降りてしまいやすくなる
骨盤の離開は、流産や早産、破水、逆子などの原因と実は密接に関係しています。
骨盤が開いてしまっている状態では、腹圧が正常に維持できず内臓器が下がりやすく、骨盤底筋群などの筋肉や神経の働きも悪くなるため、上記の問題を起こすリスクが高まります。
ズレてしまった骨盤は整復で元位置へと戻します
骨盤には関節があり、その関節面が開いてしまったり、ズレてしまうことによって歪みが生じてしまいます。
その原因には、出産時の骨盤の離開や、骨盤がまだ不安定な状態での育児による無理な姿勢が関係します。
ズレてしまった骨盤は、その骨盤の開き方に応じた整復法で処置することで、徐々に安定していきますので、専門の整骨院に診てもらうことをお勧めします。
ただし、色々な整体の仕方があるため、注意が必要な場合があります。関節は、軽い圧力で動くため、バキボキと力を入れた施術はお勧めしません。もし不安がある場合は、一度当院へご連絡・ご相談ください。
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