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干支からわかる2021年の運気と養生

最古の医学書に記された運気論

五運六気(ごうんろっき)、略して「運気」と呼びますが、中国最古の医学書《黄帝内経素問》中にある天元紀大論・五運行大論・六微旨大論・気交変大論・五常政大論・六元正紀大論・至真要大論の七篇で構成され、総じて運気論と呼ばれます。

宇宙の法則および自然の気候変化がもたらす万物と人に対する影響を論ずる天人相応の論理思考と観念です。

今回は、本年である2021年の運気を、医学の古典である『黄帝内経』に記述された内容に則ってまとめてみます。

かなり大げさではないかと思われる内容も書かれていますが、陰陽五行や五臓六腑の基本的な内容をおさえれば、現代に役立つ養生法を見出すことができます。

2021年は辛丑年(水運不及の同歳会の年)

2021年の干支は辛丑(かのと・うし)年です。

昔は年月日などの日付を十干十二支、つまり干支(えと)で表していました。

甲乙丙丁戊己庚辛壬癸の十干(天干)から地の五運を導き、

子丑寅卯辰巳午未申酉戌亥の十二支(地支)から天の六気を導きます。

「五運」とは木運・火運・土運・金運・水運の五つ。

「六気」とは風・火・暑・湿・燥・寒の6つのエネルギーで、三陰三陽と結びつき、厥陰風木・少陰君火・少陽相火・太陰湿土・陽明相金・太陽寒水の六つです。

この五運六気によって万物自然の運行を理解していました。

辛丑年は不及の歳運と在泉がともに水であり、同歳会の年です。

すなわち中運少羽(水運不及:すいうんふきゅう)と在泉の太陽寒水の五行属性が相合しているので同歳会といい、本年は上は太陰湿土が司天、中は少羽水運不及、下が太陽寒水在泉となる年です。

→司天・在泉については、また別の機会にご紹介いたします。

辛は丙とともに五運の中の水運に属しますが、辛は陰年のため水運不及といいます(逆に陽年の場合は太過という)。水運不及の年は、我を剋する土の雨気が勝気となり、我が生む木の風気が復気となります。水運不及(水の気が少ない)なので、司天の土の気が水を剋する(五行において土は水に勝つためです)ため、土兼水化といって、土運が政を得て土運平気の年(大過でも不及でもない年)と同じになります。本年は運気が寒、勝気が雨、復気が風です。

運不及の年に勝復の気が現れるのでその時期を「邪化日」といい、もし勝復の気が現れれば災害の起こる方角は北方の一宮です。雨化の勝気と風化の復気なので、暴風雨に注意が必要です。

水運不及の影響

水運不及を別名「涸流」と呼び、封蔵(水がもつ自分以外のものを取り込んでため込もうとする性質)の気がないことを指すので、万物が乾燥し枯れてしまいます。

「涸流」の年をまた「反陽」とも呼び、蔵気が衰弱することで、エネルギーを閉じ込めておく封蔵の力を使えずかえって火の化気が旺盛となり、生長の気が伸びて四方に広がろうとします。

冬ごもりする虫たちも冬眠しようとはするが叶わず、土地の表面は潤っていながら泉水は減少していたり、草木は繁茂し、一見したところ万物が繁栄秀麗にして豊かにみえます。

しかし、実際には内気はよどんで流れにくいために、失禁したり尿路結石になったりなど、乾燥してやせ衰える病になったり、五臓における腎(泌尿器系)に相当する病が関係します。

辛丑年は司天が太陰湿土なので、水運はさらに衰えて土の平気が現れます。土運の正常の効能を「備化」といって、万物の気を生育させて形が備わります。この時期、天地の気が調和し、その徳は四方に流布し、五行の気は申し分なくその作用を発揮できます。つまりその気と性は和平和順にして、その作用はよく上りよく下がり、その生化は万物を成熟豊満にあらしめるわけです。病においては大小便が不暢であったり閉塞してしまったり、これは土の邪気が腎臓を傷った場合に起こることですね。

五行の力関係の話になりますが、土の邪気が水を抑えれば、水はその代償として風木の気を生じさせ、大風が起こり、草は倒れて伏し、樹木は枯れて落葉し、土の気がもたらす生発の力は発揮できず、黄色の穀物が収穫できなくなります。

人に影響がでれば、顔色が安定せずしきりに変わり、目はかすんで見えづらくなったりハッキリものが見えず、物が二重に見えたり正常に見えなくなり、筋骨はひきつり痛んで動きづらくなり、肌肉は痙攣し、皮膚に風疹がでてしまいます。邪気が胸郭の中に侵入したならば、心腹が痛みます。これは木気が大過(強くなり過ぎた)した場合であり、土の気を傷った結果です。

水運不及の影響が現れれば、チリが舞うような霧やにわか雨がみられ、これに伴い大風が起こって樹木を震い倒し、こうした災害は木の復気によるものであり北方に発生します。

太陰湿土司天の影響

司天である湿気が地に降り、在泉である寒水の気が起これば、火気は必然的に傷られ、陽気大衰して元気がでなくなり、気分がすっきりせず、陰痿などの症状が現れます。雨や湿気が多いと、腰臀部が痛み、動作が不自由で手足が冷えます。

太陰司天、太陽在泉は皆陰気であり、陰気が独行すれば陽気は退散するので、その際しばしば大風が巻き起こります。司天の気が地に降り、在泉の気が天に上昇すれば、白色の雲霧が覆い、寒雨が降り、万物は夏の終わりから秋の初め頃に成熟することになります。寒気と湿気の侵襲により、人々は寒湿を患いやすく、腹部が張って苦しく、全身腫脹しやすくなり、腸胃の不調が増え、手足・下半身が冷えて筋脈がひきつり硬くなります。

2021年の主気と客気の配置図

客主加臨

一年を各六気の時節(六歩といいます)に分けて、少し細かく今年の運気を再度確認していきましょう(今回五運による見方は割愛します)。

天の六気とは風・火・暑・湿・燥・寒の総称で、三陰三陽と結びつき上図のように厥陰風木・少陰君火・少陽相火・太陰湿土・陽明燥金・太陽寒水を表します。主気と客気の別があります。

「主気」は一年の正常な気候の規律を説明する場合に用いられ、その順序は厥陰風木→少陰君火→少陽相火→太陰湿土→陽明燥金→太陽寒水で循環し(上図では一番外側に示したのが主気)、毎年この配置は固定され変わりません。

「客気」は、気候の異常変化を説明する場合に用いられ、その順序は厥陰風木→少陰君火→太陰湿土→少陽相火→陽明燥金→太陽寒水で循環し(上図では外側から3番目に示したのが客気)、毎年移転するもので、主気が固定していることとは対照的に、客の往来は流動的であることから客気と名づけられています。

毎年不変の主気の上に、年々変化する客気を載せて分析するのです。

これを「客主加臨」といいます。

詳しい推算方法は別稿で解説する予定ですが、まずは本年の主気及び客気の六歩を示します。

先に2021年の各歩の期間を表します

(一歩は60日と87.5刻で4つの節気)。

第一歩(初之気):大寒〜啓蟄  1/20〜3/19

第ニ歩(二之気):春分〜立夏  3/20〜5/20

第三歩(三之気):小満〜小暑  5/21〜7/21

第四歩(四之気):大暑〜白露  7/22〜9/22

第五歩(五之気):秋分〜立冬  9/23〜11/21

第六歩(終之気):小雪〜小寒  11/22〜1/19

ここに、上図に示すように主気と客気を示します。

                 主気                    客気               逆順    

第一歩:厥陰風木     /    厥陰風木        同気

第ニ歩:少陰君火     /    少陰君火        同気

第三歩:少陽相火     /    太陰湿土         逆

第四歩:太陰湿土    /     少陽相火         順

第五歩:陽明燥金    /     陽明燥金        同気

第六歩:太陽寒水    /    太陽寒水        同気

客気を主として考えます。客気が生ずる、あるいは主気に勝つ場合は順であり、これに反すれば逆となります。

一般的には、順であれば気候の異常変化があまり大きくは生じず、逆であれば異常変化が比較的大きく、同気は気候の異常が特にひどく(倍烈ともいう)発病しやすくなります。

解説

<初之気:大寒〜啓蟄  1/20〜3/19>主気と客気ともに厥陰風木。主客の二気が同気であることから、春に正当の木気を得て風気が伸び、生発の気が盛んで万物が繁栄し、順調で滞りない快適さを感じることでしょう。風の影響を強く受けると身体は重だるく、出血しやすく、関節が拘急硬直し、筋脈が萎衰えやすくなるので風にあたりすぎぬよう注意します。

<二之気:春分〜立夏  3/20〜5/20>主気・客気ともに少陰君火。二気が相同するので正当の火気を得て万物が生育します。基本的に平穏ですが、邪気旺盛となれば温熱の病やリンパ節結核が流行ります。

<三之気:小満〜小暑  5/21〜7/21>主気が少陽相火、客気が太陰湿土。火が土を生じ、司天の気が旺気して湿気が降り、地気上昇し、雨が多くなるとともに寒冷の気がこれに付随します。もし寒湿の邪を受けてしまうと、身体がずっしりと重苦しく、むくみ、胸腹が脹満するなどの症状に苦しみます。

<四之気:大暑〜白露  7/22〜9/22>主気が太陰湿土、客気が少陽相火。相火が主気の上に加臨し湿熱となれば地気は上昇し、天気と相通ぜず遅かれ早かれ寒風が吹き始めて、熱気と寒気が切迫し、草木の上に煙霧が立ちこめ、湿性の気が流動せず露が現れ肌に冷ややかさを感じ始めます。

<五之気:秋分〜立冬  9/23〜11/21>主気・客気ともに陽明燥金。痛ましい寒冷の後、寒霜が早まるため草木は枯れて黄ばみ凋落しする。皮膚や汗腺・肌理などの疾病にかかりやすく、衣類や住環境に注意しましょう。

<終之気:小雪〜小寒  11/22〜1/19>主気・客気ともに太陽寒水。寒気と湿気が大いに振るい霜が集まり、陰気凝結して水が凍りやすくなり、陽光が行き届きにくくなる。司天の太陰湿土と在泉の太陽寒水という寒湿の気が気交して互いに対立するために、寒邪を受けると関節がひどくこわばって痛み、動くのもままならず、腰臀部の痛みに悩まされます。

2021年の養生

水運不及でかつ太陰司天の年は、腎臓の気が弱ります。その上水が火を抑えきれず反陽による症状も加わります。例えば、心が落ち着かずわさわさとし、乾燥しやすくげっそりと痩せやすくなります。手足が冷えあがり萎えて動かしにくくなったり、泌尿器系の障害も考えられます。そこで、まず腎を養う養生が大切です。

司天である太陰湿土の影響により、一年を通じて湿邪の問題が関わってきます。温かい時期には湿熱。寒い時期に湿寒。あまり味の濃いものや脂っこいものを食べ過ぎると体内に湿をため込んで重だるくなってしまうかもしれません。在泉である太陽寒水の影響を受けると、湿と寒の陰気により、陽気が大きく衰退します。湿の邪気を祓って、陽気を益する食べ物や住環境をととのえましょう。

食べ物でいえば、苦味のものや温性去寒の食べ物です。苦味は心を落ち着かせ、利尿通便し、乾燥によって湿邪を除く作用があります。苦瓜、ごぼう、ふき、茶葉、レバーなどが苦味です。身体を温める食べ物は、しょうが、ねぎ、タマネギ、ニンニク、紫蘇、かぼちゃ、牛肉、鶏肉、エビ、紅茶などが良いでしょう。

ただし、これも季節に応じて摂るのが望ましいので、一概にはいえません。少し意識して過ごしてみるといいですね。

腎を養うには黒色の食べ物です。黒米、黒豆、黒キクラゲ、黒ごま等です。他にも、海苔・昆布などの海藻類、松の実・クコの実などの木の実類、山芋や銀杏など粘りや渋みがあるものもよいです。

風に当たりすぎたり冷えを受けることなく、適度に運動して汗をかくことはいうまでもないかもしれませんが、非常に大切なことです。腎臓や消化管の働きを助けるにはよく歩くことが大事です。足の内側を揉んで、血行をよくしておきましょう。

おわりに

中国最古の医学書ともいわれる黄帝内経に基づく今年の運気はいかがでしたでしょうか。紀元前200年頃から220年頃にかけて編纂されたとされる医学書ですが、万物自然の摂理を五運六気という天の気と地の運によって説明し解き明かそうとする緻密さに驚かされます。

天の六気という6つのエネルギーをまわして24節気として地を栄養し、大地に降り注がれた天の六気は、今度は大地の五運を使って天の気を消費運用し命を育みます。

天の気が太過や不及などしてバランスをとりながらめぐる一方で、地の方は五運のシステムで相性相克し天の六気を運用して人(や動植物)を育むので、天地二気の間に立つ人の気・血・水は過不足し、病気になったり生かされたりします。

もちろん、中国で生まれたものですから日本にそのままあてはまりませんし、エアコンやガス電気が敷かれた現代とは異なりますので、鵜呑みにはできませんが、こうしたシステムを理解して、当時の人々が天の気や地の気の変化をいち早く察知し養生(はたまた農業や治政)に役立てていこうとする知恵を、今も継承し活かせればと考えます。


京都市東山区三条の鍼灸・接骨院 白澤堂HAKUTAKUDOU

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Nagahama

はじめまして、鍼灸・接骨院「白澤堂HAKUTAKUDOU」の院長・長濱です。 当院では、東洋医学の幅広い知識を現代に活かし、皆様の健康を支える施術を行っております。気血のバランス、骨格のバランスを整えて本来の正常な機能と動作を取り戻すことが大切です。心身のお悩み、お気軽にご相談ください。

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