「反り腰」って腰痛の原因っていうなんとなくのイメージがあるんだけど
そうだね!例えば仰向けで寝ると腰が痛い人は腰が反ってる、なんていわれるけれど、今回はそうした反り腰について解説していくよ☆
目次
反り腰は腰痛の原因?誤解と腰痛の真実
「わたし、反り腰なもので…」「反り腰はすべり症や脊柱管狭窄症の原因になる」など
ストレートネックという言葉と同様、「反り腰」という言葉が広く浸透してきたように思いますが、多くの人が反り腰を腰痛の原因と信じています。
その責任は、整骨院や鍼灸院に行って、仰向けで寝たときに腰とベッドに手のひらが入ってしまいますね、「あなたは反り腰です」と言われたことや、ヨガやストレッチ教室などで「腰痛の原因になる反り腰を解消しましょう」などと言われてしまったエピソードなど、セラピスト側にもあります。
正直、「あなたの腰は反り腰だから痛みがとれないんですよ」と言ってしまった方が、インパクトもあり納得も理解もしてもらいやすいのです。
ただ、一般的な理解は「反り腰」とは骨盤が過度に前傾してしまったことによる障害ということですが、ここすらあまり理解されないまま、反り腰ってなんとなく腰が反ってて、それで腰に悪いんでしょ?みたいなイメージで「反り腰」という言葉だけが独り歩きしてしまっている感もあります。
一般的な理解に付随する反り腰のチェック方法には、仰向けに寝たときに腰とベッドの間に手のひら一枚分の隙間があれば反り腰、壁に背中をつけて立ったときに腰と壁との間に拳一個入るなら反り腰、というものがあります。
反り腰を解消して、ベッドに点接地ではなく面接地できれば、仰向けに寝たときの腰の痛みもなくなりそうですよね。それはそのとおりだと思います。
ただ、このあたりちょっと誤解をしてほしくないというか思い出してほしいところなのですが、
そもそも腰は反っててあたりまえなんです。
「反り腰」という言葉が独り歩きしてしまうと、腰が反っているのはダメなことだと誤解されているケースがけっこう散見されます。
「生理的前弯」ということばがあります。直立時に腰の骨である腰椎は、生理的な前カーブがあるということです。背骨のS字カーブという言葉は耳にしたことがあるかと思われますが、首は前カーブ、胸は後カーブ、腰は前カーブというように背骨はS字状にカーブしていることでうまく体重による負荷を分散できていますよね。
なので、腰はもともと反っていてあたりまえということを覚えておいてください。
実は反っていたほうが腰が安定する
頸椎、胸椎、腰椎はそれぞれ関節面の角度が違います。
腰椎は関節面がほぼ垂直の状態で重なっていて、そのため、前かがみの姿勢になった時に各関節は開いてしまってとても不安定になります。そうならないように、腰にはもともと前弯のカーブ=生理的前弯があるわけです。
下の画像をみてください。
写真の左は腰を前弯させたときですが、上下の背骨の関節がカッチリとはまり込んで関節面どうしが締まった状態です。
一方で写真の右側は、腰椎をわざと後弯(猫背姿勢)させた状態ですが、背骨の関節は大きくひらいてしまい、関節と関節の隙間ができてぐらぐらと不安定な状態がわかるはずです。
腰椎に関しては、関節面の傾きの性質上、生理的前弯があることで、関節がしっかりとしまって安定化され、関節面がピタッとあうことで痛みのない動作が可能となります。
反対に、生理的前弯をなくしてしまう=腰椎の後弯をつくった猫背の姿勢が長期化したり、後弯の姿勢で重いものを持ち上げたときは、関節が開いて安定のない状態のところに負荷がかかるので、ぎっくり腰を繰り返したり、急に傷めてしまいます。
なかには関節は牽引したり、ゆるめた方が負担が減ると勘違いしているセラピストも多いため、関節はどんどん開きましょう!引っ張りましょう!ストレッチしましょう!という話になってくるのですが、実際には関節面どうしがピッタリあって適切な圧力がかかっている状態が痛みのでない正常な状態です。
だから、物を持ち上げる時でもなんでも、腰が丸まらないように、前弯をしっかりつくって関節に圧力がかかり、安定させてから持ち上げた方がギクッとした痛みがでることはないのです。
反り腰と生理的前弯の違い
ここからが衝撃の事実ですが、
生理的前弯以上に反ってしまっている過度な反り腰が「真の反り腰」と便宜上名付けるとすると、
実際には先述の反り腰チェック項目にあてはまった人もしくは反り腰と言われた人であっても、レントゲン上で生理的前弯以上の異常な前弯がみつかる人は、全体の1%にも満たないのです。
真の反り腰というものはほとんどないと言えます。
真に腰が過度に反っている場合でも、ハイパーローダーシス(hyperlordosis)と医療分野では呼ばれますが、椎弓切除術などの術後に過度の湾曲がみられるという特殊な場合や先天的なものがほとんどです。
というわけで、本当の反り腰と呼ばれるものはほぼないことがお解りいただけたかと思います。そうなると、反り腰が腰痛の原因というのも、なんだか変な気がしませんか。
しかし、見かけ上生理的前弯が強調されたようにみえる姿勢があることは特筆しておかなければなりません。
それが、スウェイバック姿勢(またはカイフォロドーシス姿勢)と呼ばれる姿勢です。
スウェイバック姿勢-カイフォロドーシス姿勢
問題視される反り腰といわれるのは、このスウェイバック姿勢ではないかと思われるほど、臨床上よくみられるものです。
股関節を前方へ突き出したような立ち姿勢で、結果的に腰は前弯が増強されたかのように見えます。しかし、この場合も腰椎自体は生理的前弯以上に反ってはいません。股関節との位置関係で見かけ上反っているように見えます。
この立ち方で立つと、股関節前面の靭帯の支持によって立てるので、筋力をつかわないため楽に立つことができるので、ついついとってしまいやすい姿勢です。
猫背だからと姿勢をよくしたくて、過度に腰と股関節を前方に突き出してしまう場合にもみられます。
また、背の高いことにコンプレックスをもっていた人が、若年時に背を低く見せたいという意識からとってしまうことで身についてしまうケースも多くみられます。
こうした姿勢の場合、骨盤や股関節が歪むことによる腰痛が発生します。自分で姿勢を正す場合には、股関節を後ろ(踵の方向)に少し引くことで、スウェイバック姿勢を回避することが容易にできます。
上述したスウェイバック姿勢以外にも、股関節の屈曲拘縮(股関節が曲がったまま)によってお尻を突き出し、腰が反ったように見える姿勢もありますが、この場合の原因は股関節や骨盤にあります。
代替用語として「ストレートランバー」
「反り腰」というと、いかにも腰が反っているのが悪いと感じ、腰を反らないようにしてみたり、あるいは腰を丸めてみるという弊害がでてきます。
先述したように反り腰といえどもその前弯は生理的な範疇のものです。そこから、関節を開放したり緩めたりする目的で、腰椎を反らすのではなく、まっすぐにしてみたり丸めてみたりすると、腰痛を繰り返しやすい腰のできあがりとなってしまいます。
そのため、反り腰よりはむしろ、腰椎の後弯の方が危険です。
ストレートネックにちなんで、「ストレートランバー」や「ストレートバック」などと言い換えたほうが良いと提唱します。
腰痛の真の原因
腰痛の原因については、別のブログに何度も書いていますので、詳しくはそちらをご参考ください。簡単にいえば、腰痛の真の原因は、腰椎の部分にはほとんどなく、骨盤や股関節由来のものがほとんどです。
その多くが骨盤の関節のゆるみです。逆にいえば、骨盤のゆるみが解消されれば、腰椎のゆるみも解消されるため、痛まなくなります。
骨盤の関節のゆるみとはどういうことかなど、もっと詳しいことが知りたい方は次のブログの中でも解説していますので、ご参考ください。
では、仰向けで寝たら腰が痛くなるわたしはどうしたらいいの?と言いたくなりますよね。
仰向けで寝た際に腰が床面に設置しない場合は、腰や脚の緊張があるという解釈は間違いありません。床面との接地面積が少なく、たしかに痛みがでやすい状態ともいえます。
しかし、その腰の緊張はなぜ起こっているのかを考えればわかるのですが、その根本は、骨盤がゆるんで不安定になっていることによって、筋肉を緊張させて守らざるをえないからです。
そのため、骨盤のゆるみを解消した時点で、仰向けで寝たときの痛みはその場でなくなります。
いわゆる「反り腰」の治し方
真の「反り腰」はないと説明してきました。
しかし、反り腰という言葉がこれだけ広まったいま、仰向けで寝ると痛みがあるとか、長時間立っていると腰が痛いであるとか、朝起きた時点から腰がずっと重だるい、もしくは上述のスウェイバックのような姿勢になってしまって痛みがでているなどの困った声はあるわけです。
こうした症状を治すには、結論として骨盤を専門のセラピストに施術してもらうことが一番のぞましいのですが、筋肉の緊張をゆるめることを目的とした自分でできるセルフケアもお伝えしておきます。
東洋医学的なセルフケアとなりますが、以下の方法を試してみてください。
東洋医学的に、反り腰は、背中の真ん中=背骨の大きな流れである督脈の過緊張であると捉えます。
督脈(背骨)が緊張してしまっているということは、その拮抗関係にある肝の経絡の弱りが原因と捉えます。(専門的な話ですが督脈は小腸経に属し、その子午拮抗経絡は肝経と考えます)
同様に、肝は腰など背部の緊張と関わっていると言われ、太衝(たいしょう)のツボは肝氣の流れをスムーズにしてくれるため、太衝のツボをお灸で刺激してみてください。
太衝(たいしょう)に合わせて、足三里を使うことでお腹側の緊張もゆるみ、さらに氣の滞りを解消してスムーズに巡らせることができるため、この2つのツボを同時にお灸してあげることで、腹部から腰部、脚までの緊張を緩めることができます。
緊張が解ければ、腰と床面との隙間も少なくなり、背部がベッドに接地するように身体全体がゆるみますから、ぜひ試してみてください。
最後に、2つのツボの場所をご紹介しておきます。
【太衝(たいしょう)】足の親指と人差し指の間を甲に向かって進み、二指の腱がであうところの少し手前の凹みにあります。
【足三里(あしさんり)】膝を立てると、膝のお皿の下に、内と外のくぼみが2つできます。その外側のくぼみから指四本分下あたりの凹んだところにあります。
左右両方の脚にお灸するとよいでしょう。
最近、「反り腰」って言葉をよく耳にするよね!