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東洋医学からみた熱中症の予防と対策

東洋医学と熱中症

こんにちは、京都東山三条の鍼灸・接骨院 白澤堂HAKUTAKUDOUの長濱です。

これから暑くなる季節、毎年熱中症で搬送される方がニュースで報道されます。2010年以降、気温の高い日が続くのに伴い熱中症による救急搬送者数は大きく上昇し、年間50000人超の方が搬送されています。救急搬送ではなく受診者数では35万人を超える統計となっているようです。

熱中症とはどのような機序で起こるものでしょうか?基本的な対処法と、東洋医学的な養生とともにお伝えしたいと思います。

熱中症がおこるしくみ

自律性体温調節のしくみ

熱中症とは、暑さによって起こる不調のことすべてを指しますが、熱中症が起こるしくみは大きく2つの場合が考えられます。

1つは、外から受ける熱によって体温調節が追いつかなかったりできなくなり、脳・肝臓・腎臓などの臓器や血液に障害が起こるというもので、乳幼児や高齢者に多いパターンです。

2つめは、体温を上げないようにするために汗をかき水分や塩分が失われてしまい、体液のバランスが崩れて血のめぐりが悪くなって臓器障害を起こすというもので、労働やスポーツで多いパターンです。

上図で示すように、体温調節のセンターは間脳の視床下部という場所です。

暑い環境にさらされた場合、矢印で示すように、皮膚への血管を拡張させて血流を増やしたり、汗の量を増やして身体から熱を捨てようとします。

熱中症が起こる原因としては、皮膚にいく血流量が増えすぎたり、汗をたくさんかきすぎた時、あるいは周囲の環境温度や湿度が高すぎて放熱自体ができない場合に起こります。そして、図に示した「深部体温」が40℃を超えたあたりで、この図に示すような体温調節のしくみが働かなくなるために、命が危険な状況に陥ってしまいます。

このように、体温調節のしくみが働かなくなることが熱中症のこわいところであり、熱中症の半数が屋内で発生していることも注意すべき点です。

こどもと大人で体温調節のしくみが異なるということも知っておくのも大切です。

こどもは汗腺が小さく未発達で、汗によって熱を逃がすというよりは、顔や胴体などに血液を多く集めて熱を逃がすという放熱の方法が優位になります。また、体重に対する体表面積の割合が大きいことも熱を逃がしやすくしている反面、熱をもらいやすく熱い環境にいるとすぐに熱中症になってしまうおそれもあるので、注意が必要です。

もちろん、高齢者は身体の水分が若い人より少ないので発汗も少なく、自覚しにくいということもあって熱中症にかかりやすく死亡につながることも高いです。住居の室温管理や水分摂取がとても大切になってきます。

熱中症の対処法

熱中症かな?と思った時の対処方法でまず大事になってくるポイントは、意識に障害がでていないかどうかというところです。

まず声をかけてあげ、しっかりとしていれば次に示す応急処置に進めばよいのですが、少しでも意識がおかしければ迷わず救急車を呼ぶことが大切です(対処は自己責任でおこなってください)。

基本的な応急処置としては、涼しい場所に避難して服をゆるめてカラダを冷やします。

水分だけでなく塩分を摂り、30分ほど様子をみて回復すれば帰宅して安静にしますが、症状が好転しないようであったり様子がおかしければ医療機関に受診します。

もし自力で水が飲めなかったり、むせてしまったり様子がおかしい場合も、医療機関へ搬送しましょう。

当院がおすすめする対処法と予防法

アイシングが大切

私がおすすめしているのは、氷を使った冷却(アイシング)です。

先に述べたように、脳はその組成上熱に弱いため40℃を超えたあたりから機能が弱ってしまいます。体温調節の機能が維持できなくなるということからも、一番まっさきに守らなければならないのは、熱に一番弱い脳なのです。

そこで、下図のようにアイスバッグなどを使って首の後ろを冷却します。

首の後ろを氷で冷却することで、効率的に脳の温度を下げることができます。

昔の軍人さんや農家の人が首の後ろを覆うような帽垂れつきの帽子をかぶっていたのは、ここを熱から守ることが大切であると分かっていたからです。

その他にも、脇の下や肝臓(右の季肋部)などを冷却するとよいですが、後頭部の冷却がやはり大切です。

私自身、過去に妻と真夏に三千院のあたりまで行った時に妻が熱中症になり歩くことができなくなってしまいました。その時、ちょうど売店でビニールにはいったかちわり氷のバッグが売っていたので、後頭部(首部)を冷やして、水分を摂ったところ、20分ほどで回復しました。

また、友人の知り合いが熱中症で倒れたという電話を頂いたときも、氷で首の後ろを冷やすよう指示したところ、その場で回復できたとのことです。

コンビニに売ってる氷は、簡単に手に入るしそのまま使えるのでいいですね。ただ、冷凍庫から出した直後の氷は凍傷のおそれがあるので少し溶かしてから使用してください。

ただ、やはり命に関わることなので、軽くみず、意識障害などがないか、様子がおかしくないか観察し、異常があれば迷わず救急車や医療機関にかかる判断も必要です。

周りの人にも協力してもらい、適切な判断をしてください。

※アイスノンやジェルでは充分な冷却効果が期待できないうえに凍傷の危険性もあるので、かならず少し溶かした氷をアイスバッグなどに入れて冷却してください。

凍傷を防ぐためかならず氷を溶かして霜をとりましょう

アイシングの具体的方法は、下記のブログもご参考ください。

汗をこまめに拭く

汗は体温調節にとても重要な役割を果たします。

たとえば、体重70kgの人でいえば、100gの汗が蒸発すると深部体温は1℃下げることができるくらい冷却効果があります。

ただ、汗のかきかたによっても熱中症のなりやすさが異なります。

じわじわとかく汗はいいのですが、だらだらと垂れ流れるような汗は蒸発しにくいため体温を下げる効果がすくないからです。

そのような場合には、こまめに汗をタオルで拭くことや、シャワーをかかるなどすることで予防できます。

日頃から多少なりとも汗をかく時間や習慣をつけておけば、急に暑くなった時にだらだらでてしまうのを防ぐことができ、体温調節に良好な発汗を期待することができます。

クーラーを上手に使う

暑さが原因となる熱中症においては、換気や空調が十分効いていない室内で発生することがとても多くなってきています。いうまでもなく、クーラーは熱中症対策において非常に効果的なものですね。

とはいえ、設定温度を低くしすぎると、部屋の温度と外気温との差が大きくなります。

そのため、急激な温度変化を繰り返したり、エアコンの風が直接あたったりすることで自律神経が乱れて倦怠感や頭痛、むくみや吐き気、食欲不振や眠気といった「クーラー病」の状態になってしまうこともあるので注意しましょう。

湿度も暑さの原因となりますので、クーラーをかけてもなかなか効きが悪い時は除湿を上手に使うとよいでしょう。

暑さで睡眠が浅くなると、寝不足になってしまい、疲労がたまりすぎても体調は悪くなります。寝る前に部屋をクーラーで涼しくしておくのもとても良いですが、寝不足を感じた時は無理に我慢せず、エアコンの風が直接あたらないように設定し、弱めで一晩かけておく、という選択も考えると良いと思います。お腹は冷えないように薄手のものをかけておくこともいいですね。

クーラーは熱中症対策にとても良い反面、使いすぎると熱中症を引き起こしやすくなる要因となってしまいますので、適切な利用を知り、こころがけましょう。

東洋医学的な熱中症のとらえかた

東洋医学的には、①火気や暑気を外から受けることによって熱中症に陥る場合と、②もともと冷えてしまったり体力不足があって熱中症になる場合があると捉えています。

①火気や暑気は、毎年4月20日頃(穀雨)~9月6日頃(処暑)の間に生じる気で、外界からこれらの気を受けるのですが、気が強すぎたり身体が季節についていってないと火気の影響を強く受けてしまいます。雨の多い梅雨時期や暑季では、熱さに加え湿度もかかわってくるので、カラダの流れが停滞し、汗で体温を蒸散させにくくなるので熱中症にかかりやすくなります。

②体が冷えると熱中症になりやすいというのは一見逆説的に思えますが、体が冷えているということは汗を出す能力が弱っています。熱を身体中にまわしたり、発散させる力自体がないので、暑い環境ですぐ熱の影響を受けてしまいます。また、クーラーに慣れすぎてしまい体の表面だけ冷えてしまっても、熱が深部に閉じ込められてしまう状態となり、熱中症にかかりやすい体になってしまいます。

そこで、①の火気や暑気を強く受けた状態では火の気を降ろしたり体を涼しくしないといけないので、以下のツボを養生に使います。

右手の労宮

労宮(ろうきゅう)

右手の労宮を心臓の方へ向けて押さえましょう。

まっすぐ押して、そこから心臓(手首の方向)に向けて押さえて3秒押す、2秒休むを10回~15回ほど繰り返します。

呼吸は止めないようにしましょう。

労宮の場所:手の平のほぼ中央。写真の位置くらいのところをまっすぐ押さえるときゅ~っと痛みが響くところがあります。

このツボは、②の体が冷えているパターンにも使えます。どちらにせよ、このツボがいいですよ♪

右の解渓

[解渓(かいけい)]

このツボは強い火気を受けた時に下向きに押すと火を降ろさせます。

右足の足首の中央です。足首を反らすと写真の位置に太い腱が浮き上がるので、そのすぐ外側にとるといいです。

両手で足首を把握し、親指を使って、下にゆっくり揉むようにマッサージします。お灸を使ってもよいでしょう♪

②の体が冷えていたり、体力が弱っている場合には、①のところでご紹介した労宮に合わせて、以下のツボにお灸しましょう。

右足三里と太白

[右の足三里]

右すねのやや外側。膝を曲げてできるお皿の下のくぼみの外側から指4本分ほど下。押さえて気持ちの良いところにお灸しましょう

足三里のお灸が終わったら、

[左の太白]

にお灸しましょう。

左の親指内側を指先から上の方へなぞっていき、でっぱりを通り越して降りたところ。

初夏で冬から春の寒さが体の中に残ってしまっている場合も②のパターンに当てはまります。初夏には夏になったのにまだ体は冬の状態・・・という人も多いので、なんとなく元気がでない、だるいような感じの人は足三里と太白をこの時期からお灸しておくことで、夏の暑さに対応できる準備が整うことでしょう。

以上が、暑い季節に応じた体づくりをしておくための養生のツボです。熱中症予防にこの時期実施しておくとよいですよ♪

夏や梅雨時期の食養生はこちら↓もご参考ください☆


京都市東山区三条の鍼灸・接骨院 白澤堂HAKUTAKUDOU

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Nagahama

はじめまして、鍼灸・接骨院「白澤堂HAKUTAKUDOU」の院長・長濱です。 当院では、東洋医学の幅広い知識を現代に活かし、皆様の健康を支える施術を行っております。気血のバランス、骨格のバランスを整えて本来の正常な機能と動作を取り戻すことが大切です。心身のお悩み、お気軽にご相談ください。

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