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整復について

関節のずれ

私達は骨によって身体を支えているのですが、建物のように1本の大黒柱のような骨でガッチリと体重を支えてしまっては動くことができません。そのため、206個という多くの骨がつながり合って節目で動くようにできています。骨どうしのつなぎ目を「関節」といい、関節の働きによって手足を動かしたり歩いたり、移動することができるのです。若い時には、この関節の機能を十分に発揮できるので骨を動かせる範囲が広く、柔軟です。動作もダイナミックで、さまざまなストレスにも耐えることができ、疲れることもありません。
しかし、年齢を重ねるにつれ、生活の中でのケガやスポーツ活動・事故や不良姿勢の積み重ねによって関節の位置にずれが生じてしまいます。関節がずれたり捻じれる損傷の総称を「捻挫症」といい、いったん関節がずれると、途端に動かすことのできる範囲(これを関節の可動域といいます)が狭くなり、長期にわたって関節のずれが蓄積し固定化することによって腰や背中が丸くなってしまうのです。ここで大切なポイントは、骨が歪むのではなくて、「関節がずれる」ことによって、これらの悪影響がでてしまうということです。
関節の可動域が悪くなった状態のまま、生活を継続するとどうなるでしょう。「動きが悪い=ぎこちのない」箇所が身体にあるせいで、当然普通の動きができないはずなのですが、しばらくはそれを隠すようにして、代わりに他の様々な場所に負担をかけて動くことができるのです。知らず知らずのうちに、そのしわ寄せが別の関節へと波及し、損傷が徐々に進行していきます。そして、関節の許容を超えた時点で破綻します。すなわち”痛み”や”違和感”を自覚するようになるのです。
例えば、中年以降に増加する膝関節の痛み。膝痛は、膝自体に問題のある人は少なく、膝以外の仙腸関節や股関節、足関節のずれによって膝関節が間接的に捻じれることにより、痛みがでているケースが非常に多いのです。膝関節の動き自体は複雑ですが、関節面が扁平なので適合が悪く、少しの捻じれだけで痛みが強く出やすいのです。言わば、他の関節のずれから「とばっちり」を受けた状態なので、そういった場合には膝以外のアプローチで痛みが改善します。
関節のズレを治さないまま動かしていると、関節をつくっている軟骨に均等な圧力がかからないので、部分的に摩擦を起こし、炎症を繰り返して次第に軟骨が変形していきます。このような状態は変形性関節症と呼ばれ、関節の間が狭く、骨の棘や骨嚢胞などが生じて不可逆化し、痛みも強く歩行に支障をきたすようになります。このようになると、歩くのがつらいため筋力も衰え、運動自体が減り、体重も増加しやすく、関節の負担はますます大きくなって疲れやすくますます動きたくなくなります。歩くことが減って骨に圧力がかからなくなれば骨ももろくなりますから、転倒が増えて骨折の危険性が増し、脚がむくんで、最後は寝たきりになってしまう・・・こうした状況までいかないように、早期に関節のずれを生理的な位置に戻して正常に機能させることが大切です。

整復の目的

「整復」とは、ずれてしまった関節を元の正常な位置に復するための施術です。関節のずれを治すといっても、「バキボキッ」と強い力で勢いをつけて治すことはなく、痛みもまったくありません。水枕などの水圧を利用して関節が勝手に戻るのを利用することもあれば、徒手により何をされているのか分からない程度の弱い力で関節が勝手に生理的な位置に戻ってくるのを待つだけです。関節は、強い力で無理に動かそうとすると、反射的にまわりの筋肉が防御しようと抵抗するため、逆に動かなくなってしまうからです。
関節がずれると動かなくなるという現象は、ドアの建付けに例えると分かりやすいかと思います。ドアとドア枠は蝶番(ちょうばん・ちょうつがい)と呼ばれる金具で取り付けられ、ドアを開け閉めすることができますが、関節もまさにこの蝶番の働きをしているといえます。蝶番、すなわちドアの建付けが悪くなると、ドアがスムーズに開け閉めしにくくなり、変な音とともに摩擦が大きくなります。この場合、ドアの板自体が劣化しているわけではなく、つなぎ目である蝶番に異常があるためドアの動きが悪くなっています。人間の関節も同じで、関節の建付けが悪くなると曲げにくくなり、不安定な部分がこれ以上動かないようまわりの筋肉が硬くなって守ろうとするため、筋肉がカチカチになったり痛みやだるさがでたりします。この筋肉はいくらマッサージなどでほぐしても、関節を治さない限りアンバランスを守るため、すぐに硬くなってしまいます。関節どうしを正常な位置に戻してやることで、動きが正常化し、まわりの硬くなった筋肉は固める必要がなくなるので、普通の状態に戻ります。このようにして、全身の建付けをよくしてやることで、ぎこちのない動作を正常な動作に近づけ、結果的にさまざまな症状を改善させることを目的とします。
考えてみれば、例えば新車を買った時は快適に走りますが、長距離を走り月日を重ねると徐々に振動がでてきたりエンジントラブルが起こったりと、様々な問題がでてくることでしょう。しかし、定期的に整備をきちんとしていれば、同じ車であっても長年ずっと走り続けることが可能です。日常生活では様々なストレスによって、どうしても身体に”ガタ”が蓄積してしまうことがあります。特にケガなどによって作ってしまった関節の捻じれやずれは、外力を受けて起こってしまったものなので、なかなか自然に戻ることはありません。まずは、今まで蓄積したずれを整備して動きを取り戻し、同時に再びずれを作らないためにご自身で管理できるようアドバイスもさせて頂きます。将来なにが起こるかは誰も分からないので、ずっと健康でいましょうとは簡単には言えません。しかし、当院はずっと健康で動き続けることのできる基礎をつくることを思い描いています。皆様が充実した人生を送ることができるようお手伝いをさせてください。